専門性とは 4 <看護助手から再び看護補助者へ?>

看護助手という名称はいうごろから使われ、いつ頃から日本の医療機関に広がったのだろう、そんな歴史もずっと気になっていました。


それで「看護助手」で検索したら、「看護補助」という聞きなれない名称がありました。
日本看護協会が2013年(平成25年)に「看護補助者活用推進のための看護管理者研修テキストの使用に当たって」という資料を公開していました。


その資料の「第1章 看護職員と看護補助者の業務分担について」の「1 看護補助者活用推進の背景」に以下のように書かれています。

社会保険診療報酬においては、昭和33年の基準看護創設時より看護補助者は看護職と区別せずに看護要員として評価されてきたが、平成6年度からは看護配置の低い病棟に対して看護補助加算として独立した評価がなされ、平成22年度の改正においては、一般病棟入院基本料の7対1看護配置が高い病棟に対する看護補助者の配置を評価する「急性期看護補助体制加算」が新設された。


その資料の内容を読むと、「看護補助者」は「看護助手」の業務を指しているようですから、1958年(昭和33年)には看護助手という仕事があったということなのでしょうか。
ただ、私には「看護補助者」という呼び名は耳にしたことがなかったので、「看護補助者」が正式名称で「看護助手」が俗称のようなものだったのかと驚きつつ、もう少し検索したら、「看護助手の業務拡大による看護師の業務負担軽減への取り組み」(関西医科大学附属滝井病院 榎本良枝氏)が公開されていて、その中に以下のように書かれていました。

看護補助者の歴史は、1958年の基準看護の承認要件において、「看護助手」が位置付けられ、1992年医療法の改正により、「看護補助者」が位置付けられた。ついで、2010年診療報酬改定にて看護補助者の配置を評価する「急性期看護補助体制加算」が新設され、当院でも50:1急性期看護補助体制加算をとっている。


となると、最初は「看護助手」の名称だったものが、1992年以降は「看護補助者」が正式名称になったということでしょうか。


いつも身近に働いている看護助手さんのことなのに、知らないことばかりです。



<「図書館員のツボ 16 看護助手について」より>


もう少し看護助手の歴史について書かれたものがないか検索したら、「図書館員のツボ 16 看護助手について」という記事を見つけました。「病院図書館 2010.30(3)」という近畿病院図書室協議会という団体が発行している機関紙に掲載されているようです。


その中の「看護補助者の歴史」に以下のように書かれていました。

1950年の完全看護制度の創設により「看護補助者」の記載が法律上に登場することとなりました。
第二次大戦後、GHQにより作られた看護体制(患者数に対する看護師:准看護師:看護補助者数の割合)や勤務体制は、その後、幾度と改定がなされました(表3)が、その基本枠組みは現在も変わりません。


そうなると、「看護助手だった名称が看護補助者へと変更された」のではなく、もともと看護補助者が正式名称だったように読めます。


ただし、その文章には日本看護協会業務検討委員会が1996年9月に出した「看護補助者の業務範囲とその教育等に関する検討報告書」の「看護補助者の呼称例」が引用されているのですが、「介護士、介護者、看護助手、看護補佐、看護補助者、産科看護婦、病棟技能員、病棟事務員」と挙げられているように、看護補助者は看護助手を含む名称とも読めます。


ちょっとびっくりするほど多岐多様な業務が「看護補助」とされていますが、1996年の段階ですから、まだ看護から介護が独立する前の段階なので、現在の「介護士」とは異なるのでしょう。
また、1990年代はようやく病棟に事務担当が配置され始めた時代で、まだまだ看護職の補佐的な存在でした。
「産科看護婦」というのは、「産科看護助手」のことだと思いますが、「産科看護学院基準および基準期間の改正について」(平成9年、日本産婦人科医会)を読むとその経緯がわかるかもしれません。


いずれにしても、当の看護助手さんたちでさえ、いったい自分の職業の正式名称はなんなのかわからないほど、その歴史も全体像も把握されていない職種なのかもしれません。



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