10年ひとむかし 10 <使い捨てマスク>

なぜ花粉症と認めたくなかったのかという理由のもうひとつに、マスクをつけて生活するようになることを受け入れられなかったのではないかと思い返しています。


医療従事者のマスク姿も今はごく当たり前の光景ですし、花粉症の時期だけでなく年中マスク姿の人を見かけるようになりましたが、こういう変化はここ10年から20年ぐらいではないかと思います。


1990年代初め頃は、まだ病院でも使い捨てマスクはそれほど使われていませんでした。
80年代から90年代初めごろまでの病院でマスクをする機会というのは、手術室とか結核感染症の部屋に出入りする時ぐらいだった記憶です。


Wikipediaマスクの「マスク着用に関する各国事情」にこんなことが書かれています。

欧米においては日常生活の中でマスクをすることはきわめて少ない。実際に花粉症のセルフケアとしてマスクをせよという方法が紹介されることも少ない。そうしたこともあって、花粉症の時期に来日した欧米人が、市中で多くの人がマスクをしているのを見て、何事が発生したのかといぶかるという話は有名である。


80年代に難民キャンプで出会ったアメリカ人の友人が日本に来て一緒に旅行した時に、やはりマスクをしている人を見て驚いていました。
「なぜ日本人はマスクをしているのか。アメリカではマスクが必要な人は『病気』なので、外に出る事もないし、近づかないようにしている」と、すごい警戒感でした。


80年代は花粉症ではなく、風邪などでのマスク着用が多かったのではないかと思いますが。


<使い捨てマスクの広がり>


80年代の病院では感染症の病棟で使い捨てマスクがわずかに使われていた記憶がありますが、手術室では布製で、洗濯して消毒をしていました。


1990年代に入ると、花粉症の人たちが使い捨てマスクを使い始めていたような記憶があるのですが、少し遅れて病院でも使い捨てマスクが常備されるようになりました。
院内感染予防対策医療安全対策が浸透して、使い捨て製品が標準的になったことが背景にあるのだと思います。


それでも、私自身は日常生活ではあまりマスクをしたくないという気持ちがありました。
当時はまだ、マスクをすると不健康な気持ちになることと、90年代は使い捨てマスクも高価だったあたりでしょうか。


当時と今の価格の比較がわかる資料がみつからなかったのですが、富士経済という会社の「キッチン関連、殺虫剤など31品目のトイレタリー用品の調査結果」(2009年10月)に家庭用マスクについての記述がありました。

家庭用は以前綿素材のガーゼタイプが中心であったが、1980年代にフィルター付きなど高機能化が進められた。2003年には花粉症対策用で不織布タイプの使い捨てマスク「超立体マスク」(ユニ・チャーム)が発売され急拡大した。その後花粉症に加え、インフルエンザ、風邪予防対策としてマスクをするユーザーが増加し、現在では市販の製品の80%以上が不織布タイプとなっている。

2008年9月に厚労省がインフルエンザ発生時の対応策として家庭向けのガイドラインを発表し、その中でマスクの備蓄を推奨したことから消費者の購入が進み、また2009年5月に新型インフルエンザが国内発生したことからマスクの需要が急増している。2009年は、花粉症シーズンの終了直後に新型インフルエンザが国内発生したことから、品薄の状況で消費者が一斉にマスクの購入に走り、5月は一時全国の店舗で品切れ状態となった。


あ、そんなこともありましたね。
2002年のSARSとこの新型インフルエンザの流行あたりから、テレビのニュースにも世界中で使い捨てマスクを着用している人の姿が増えた印象ですね、欧米でも。


日本衛生材料工業連合会のマスクの統計データーをみると、2010年にはがくんと落ち込んでいますが、これが2009年の新型インフルエンザで家庭用に備蓄した反動なのでしょうか。
そしてその後は家庭用のマスクが2007年頃の倍になっています。


感染症や花粉症対策だけでなく、災害時の光景をみてもマスクを着用している人が本当に増えました。


これも不織布の存在なしにはなかったことでしょう。


20年前には考えたこともなかった、使い捨てマスクの広がりです。


直接リンクはできないのですが、科学技術振興機構のサイエンスチャンネルに「THE MAKING(61) 使い捨てマスクができるまで」という2000年のビデオがありました。
関心のある方はどうぞ。



ますます進化し、用途もひろがっていく使い捨てマスク。
定点観測するとおもしろそうですね。





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