マスクやアルコール類が不足し始めた時に、医療機関でも不足しているニュースがありました。
市販されているようなマスクから、手術用の特殊なマスクまで手に入らなくなったり、盗まれたりした施設があるようです。
このあたり、ぜひ、厚生労働省などで経緯を調査して記録しておいていただけたら後々、参考になることでしょう。
マスクやアルコールもそうですが、医療機関では2019年に入ってから抗生剤が不足する事態になりました。
*セファゾリン供給低下の経緯*
2019年6月3日付の厚生労働省の資料「セファゾリンの供給低下について」に、その経緯がまとめられていました。
2018年末頃:セファゾリン後発メーカーの一つである日医工において、同社がセファゾリン原薬を輸入している海外企業における異物混入、原薬出発物質の製造停止等が重なり、セファゾリンの生産に支障が発生。
2019年2月:日医工から採用全医療機関に対し供給停止の案内を開始。
2019年3月:厚生労働省からセファゾリン代替薬リスト(参考資料2)を周知。
2019年6月:厚生労働省において、ウエブ上のアンケートを用いて、各医療機関からセファゾリン使用状況、代替薬の供給状況等を情報収集。
厚生労働省において、各製薬メーカーより聞き取り調査。
私の勤務先は産科診療所ですから、使用する抗生剤の種類はそれほど多くありません。
1990年代から始まったGBS陽性の産婦さんへの分娩前の抗生剤投与と、帝王切開時の抗生剤使用、そして抗生剤に対してアレルギーがある方に対応するための抗生剤ぐらいです。
セファゾリンは発注していなかったので、「業者さんの抗生物質の在庫がなくなった」ことに気づいたのはもう少し後になってからでした。
こういう渦中にいる時には、「何かが起きた」ことを記録しておくべきだったと悔やまれるのですが、GBSの治療に使うペニシリン系の薬剤が手に入りにくくなったのがたしか春頃でした。
毎日のように業者さんに電話して、「在庫があったら1箱でもいいので確保してください」とお願いする毎日が始まりました。
帝王切開の抗生剤は他の種類に変更しても構わないのですが、GBSに対してはペニシリン系に変わる薬剤はなさそうでした。
おそらく、総合病院でセファゾリンの代替薬としてこのペニシリン系の薬剤を確保し始めた余波が産科診療所にも来たのだろうと推測しています。
どこからも今後の見通しが伝えられることなく、綱渡りのようにペニシリン製剤を確保し、ようやく年末ごろからは、元のように安定して供給されるようになりました。
安堵していたら、今度はマスクと消毒用アルコールの不足でした。
こちらは、なんとかしのいでいますが。
1980年代初頭から総合病院、そして産科診療所で勤務してきて、「医療機関から物がなくなる」不安に直面したのは、記憶の中では初めての1年でした。
それでも、メーカーや業者の方々、厚生労働省の方など、私の知らないところでの安定した供給のための努力によってなんとか収束してきたのだろうと思います。
次回からは、こういう状況が始まった段階で、きちんと記録をしていこうと思った次第です。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。