10年ひとむかし 23 <赤ちゃんのお尻ふき>

トイレに関係する話が続きますが、今日からしばらくは赤ちゃんの話です。


私が勤務してきた産科施設で、布おむつから紙おむつになったのが1990年代半ばですが、お尻ふきの変化はもう少し時間差があります。


以前は、アルコール綿と同じように、病棟でスタッフが綿を切って水に浸して、お尻ふきを作っていました。いえ、今もまだこの方法の施設があると聞いて、驚きましたが。
そういう手作りのお尻ふきから、市販の製品化されたものに変化し始めたのが2000年代に入ってからでした。
不織布の歴史で、1978年に育児用品メーカーからお手拭き用のウエットテイッシュが発売されたということを紹介しましたが、赤ちゃんのお尻ふきが手頃な価格で産科施設に広がるまでには、20年ぐらい時間が必要だったのかもしれません。


「使い捨て製品はもったいない」「布おむつのほうが赤ちゃんによい」「楽をしてはいけない」などの気持ちの問題も社会にはあったのだと思いますが、毎日結構な量を使用する赤ちゃんのオムツやお尻ふきですから、価格の問題や処理方法など現実の問題も、紙おむつとお尻ふきの変化にはあったことでしょう。


布おむつであれば、洗濯をすれば赤ちゃんの排泄物は下水へと消えていきますが、紙おむつの場合にはゴミの日まで臭い対策をしながら家のどこかで保管します。
病院の場合、たとえば赤ちゃんが十数人いると、あっという間に医療廃棄物の段ボールが一杯になりますから、処理業者への費用と、布おむつの洗濯を業者に頼む費用を比べて判断されていたのだろうと思います。



1990年代に紙おむつが広がり出して、病院では布おむつでも自宅では紙おむつを使う方が増えた印象があります。
ご自宅に訪問させてもらうと、紙おむつがまだ高価で、今のように安売り店があちこちにあったわけではないので、布おむつと紙おむつを併用という方もいらっしゃいました。
ただ、お尻ふきだけはまだ病院と同じように、綿を切って水に浸したものを使っていたり、プラスチックの容器にお湯を入れて洗い流したりという方法だった記憶です。


紙おむつより数年ぐらい遅れて、お尻ふきが一般化した記憶が私にはあるのですが、実際はどうだったのでしょうか。


私の30年ほどの産科施設での経験の中で、最初の10年は布おむつと綿のお尻ふき、そして次の数年ぐらいが紙おむつと綿のお尻ふき、そして十数年ほどが紙おむつと市販のお尻ふきの使用という感じです。
その中で、最近思うことがあります。


市販のお尻ふきを使うようになって、入院中におむつかぶれになる新生児がほんとうに稀になったと。


これはあくまでも個人的な体験に基づく印象にすぎないので、全体像としてはどうなのだろうと気になっています。
もう少し続きます。




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