新生児のあれこれ 49 <新生児の声は誰が聞いてくれるのだろう>

昨日の記事で、入院中の生後2日目に添い寝中に脳性麻痺になったと考えられる事例報告を紹介しました。


その報告書の「4. 今後の産科医療向上のために検討すべき事項」の一部を紹介します。

1)当該分娩機関における診療行為について検討すべき事項


母子同室中の添い寝・添い乳と窒息については、はっきりとしたエビデンスがない現状である。本事例は、早期母子接触には該当しないが、母子同室は一般的には早期母子接触に連続した一連の母乳育児支援であり、2012年10月に公表された「『早期母子接触』実施の留意点」を参考とし、分娩後の妊産婦が安全に児に乳首を吸啜させることができる母子接触を目的とした管理システムに関して、院内で十分に検討し、施行マニュアルを早急に作成することが望まれる。新生児の出生直後の母子接触においては、妊娠中からの妊産婦や家族に対する十分な説明および同意の取得と、機器を用いた経皮的動脈血酸素飽和度の測定やモニタリング、新生児蘇生に熟練した医療者による観察など安全の確保を行うことが望まれる。

さて、現実にこのような事故に遭遇されたこんさんが、病院側の提示した再発防止策を教えてくださいました。


あくまでもこんさんと私の関係はネット上のやりとりだけなので、私自身が「事実」を確認したわけではないのですが、こんさんからのコメントはいつも私が働いている現実との齟齬を感じさせない内容なので信頼をもって記事の参考にさせていただいています。


で、病院の提示した内容というのは以下のようです。

内容は、1. 母子同床を禁止し、赤ちゃんはコットで寝せるよう指導する。2. 帝王切開手術後の授乳は、母子だけで添い乳と添い寝させるのをやめる。体を30度以上に起こして横抱きできるようになるまでは、授乳には助産師が付き添い、終わったら助産師が預かる。
3. 酸素モニターを、入院期間を通してすべての赤ちゃんに装着する。


ああ、もどかしいですね。
もっと根本的な対策は、出産後のお母さんと新生児の側からスタッフが離れないことのはずなのに。
現在の日本の母子同室の方法では、「お母さんと赤ちゃんの側に昼夜を問わず誰かがそばにいる」という最も大切なことが不十分なのではないでしょうか。



<新生児の声は誰が聞いてくれるのだろう>



さて冒頭の検討すべき事項の中に、「わが国における産科医療について検討すべき事項」として以下のように書かれています。

(1) 学会・職能団体に対して


ア. 母児同室ならびに母子同床(添い寝・添い乳)等の新生児の有害事例について集約し、安全管理について検討・提言することが望まれる。
イ. ALTEに対する病態の解明と医療従事者に対しての注意喚起や知識の普及が行われることが望まれる。

本当に大事なことだと思います。
この事例報告が何年に出されたものかは記載がないのですが、2009年に産科医療補償制度始まってから、安全管理に必要な情報や再発防止策がわかるようになりました。


ただ、まだ冒頭の赤ちゃんのように脳性麻痺のお子さんの事例検討ですから、こんさんの赤ちゃんやこうたろう君のように脳死状態になった赤ちゃんは対象外です。


いったん母乳育児推進という目的は脇に置いて、新生児を安全に見守る体制とはどういうことか立ち返った議論が広がって欲しいものです。





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