目から鱗 2  <液状乳児用ミルク>   

今も私の勤務先では一日中、粉ミルクを調乳しています。
手を洗い哺乳瓶を準備し、赤ちゃんの口に入るまで時に数人の赤ちゃんの大合唱にせかされています。


あの大震災からもうじき4年になるというのに、また液状ミルクが実現する道は遠のいたのかとがっかりしていたところ、先日末永理恵さんから署名キャンペーンを始めたといううれしいお知らせを頂きました。末永さん、ありがとうございます。

おでかけにも備蓄にも使える便利な乳児用液体ミルクを日本でも製造してください!

液状乳児用ミルクについてこれまでいくつか記事を書きました。

「液状乳児用ミルクの普及を望んでいます」
「災害時の完全母乳『戦略』」
「災害時の母乳代用品の監視行動」
「必要な答えは液状乳児用ミルクではないか」
「液状乳児用ミルクについての小まとめ」
「液状ミルクのメリット-滅菌されている」

なんと言っても液状乳児用ミルクのメリットは、製品の段階で無菌的に製造されているという点です。
災害時のように、手を洗ったり哺乳瓶を消毒するための清潔な水もない状況で、そのまま飲ませられるのですから。


何でこんなにすばらしい物が、日本では知られていないのでしょう。かくいう私も東日本大震災の直後に初めて知ったのでした。
なかなか日本で液状乳児用ミルクの導入が進まないのは、上記の「小まとめ」で液状乳児用ミルクの存在が日本では知られていないことと、牛乳は生鮮食料品というイメージがあるという2点があるのではないかと私は考えていました。


さて、末永理恵さんが始められた署名活動には、たくさんのコメントが寄せられていました。
現在はそのコメントが閲覧できないようになってしまいましたが、11月20日までの分を読んだ限りでは、私のその推測がかなり当たっていたような印象です。


「そんな便利なものがあるなんて」「考えてもみなかった」「何で思いつかなかったのだろう」「今までなかったのが不思議」
そう、「目から鱗だった」というコメントが大半でした。


<私にとっても「目から鱗」だったコメント>


非公開になってしまったコメント欄ですが、お名前などがわからないようにしてご紹介します。(もし末永さんにとってご都合が悪い点がありましたらご連絡ください)


夜間やお出かけのときの調乳は本当に大変であることが切実に伝わるコメントがたくさんありました。
産科に勤務していても、ここまでリアルに家での調乳の実情を聞く機会はありませんでした。

・冬場なんてポットにたどりつくまでが地獄です。
・作り置きしているとすぐに腐ると脅かされ、毎回律儀に焦りながら、母乳がでない自分の体を憎みながら作っていました。
育児ノイローゼの一端は夜中のミルクにある。
・(外出時)赤ちゃんに加えて授乳セットの重さ、本当にしんどいです。
・外出しづらい。粉ミルクは手間がかかるし、大荷物の水筒に入れたお湯はいつまでも保温できない。
・夜泣きのあのつらさが少しでも軽減される未来の親が増えますように。
・液体ミルクがあったらもっと精神的にも肉体的にも楽に育児ができた。
・乳児を育てる親にとって1分1秒が大切で、液体ミルクになるだけで推定1日1時間の時間ができる。


さまざまな状況で育児をされていることも伝わるコメントです。

・持病と体質のために生後2週間目から完全ミルク。少しでも母乳に近づけた物を、液体でお腹の空いた子どもに直ぐにあげられる物を。
・双子育児中。(双子の育児のコメントは複数ありました)
・日常でも母親の体調が悪くて母乳が出なかったり、出ても内服薬のせいで飲ませられないような時、赤ちゃんの泣き声にせかされながら具合が悪いのを我慢して調乳しなくて済んだら涙がでるほどありがたい。
・身体に障害を持たれている保護者にとっても、便利な商品になると思う。
・できればミルクアレルギーの子ども用も作って欲しい。


やはりあの大震災の時に被災された方、被災はしていないけれど災害時の育児に非常に不安を強くもたれた方のコメントがたくさんありました。

・一人目が生後20日の時に東日本大震災が起きました。母乳も出なくなり本当に辛かった。あんな思い、二度とお母さんにも赤ちゃんにもさせたくないです。
・親戚が被災して、あの時にはおっぱいも止まったと。離乳食を始めたばかりなのに、7ヶ月の子に菓子パンを泣く泣く与えたと。
・震災の苦労を活かせないような能無しにはなりたくない。
・震災の時にかなり苦労しました。赤ちゃんが飲める水を探すのが大変なのです。
・避難所でのお母様方のご苦労を見て来たので、こんなに便利なものがあるなら。
・当時震災のニュースを見るたびに自分の子どもが同じ状況に置かれたらと思うと、心臓がギュッとした。今年に限っても避難が必要な災害がたくさんあったので、今後もそれは予想される。
・災害のために家で備蓄しておきたかった。
・ほんの十数時間で脱水症状をおこしてしまう新生児にも、災害時にすぐにヘリで投下できるミルクを。
阪神大震災の時に知りましたが、まだ日本にないとは!
・この地震大国で、災害時の水不足や衛生の不安を考えたら無い方がおかしい。
・日用品として普及して欲しいが、ダメなら防災用品として割高でもかまわない。


「完全母乳ですが」というお母さん達の声もありました。

・母乳育児で息子をそだてているが、人体を介している以上、それが突然できなくなるのでは?という不安を常に抱えています。
・完母ですが、もし自分に何かあったら、もし母乳がたりなくなったらと不安がいっぱいの毎日。
・完全母乳で今すぐに必要ではありませんが、私が災害で死んだら、母乳がでなくなったら、次の子を育てる時に母乳がでなくなったらと考える。
・完全母乳からミルクを使う時、たとえば保育園に預けるようになる時にミルク用品一式をそろえなければならない事が負担になる。


たくさんの方のそれぞれの経験や思いが伝わるものでした。
中には「調乳済み」であることへの不安のコメントもやはりありました。

・液状で、しかも常温で保存できるのですから添加物が気になります。

製品を完全に無菌状態にできない粉ミルクと違って、あらかじめ滅菌したLL(ロングライフ)製品の知識の周知も必要だということでしょう。
このコメントを書かれた方はその前後の文からバランスの取れた方という印象でしたが、こうした安全な食べ物への関心フードファデイズムに変わってしまう危険性があります。



ネット上での署名活動は、こうした生の声が双方向で伝わることにあるので、またぜひコメント欄が公開されるとよいなと思います。
状況の多様性を知る、言い替えれば全体を見渡せるということが何よりも「目から鱗」の機会になり、狭い自分の知識や気持ちから解放されるきっかけになることでしょう。


そして現実の生活に必要な改善であることが大事で、「母乳とミルク」の話が信念による政治運動になってしまってはいけないと思います。


私にも目から鱗の話をたくさん読む事ができました。
是非、液状乳児用ミルクが実現しますように!



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