乳児用ミルクのあれこれ 45 液状乳児用ミルク元年

国産の液状乳児用ミルクがいよいよ来月から市販されるとのお知らせが、職場に届きました。

これまでも災害時限定で液状乳児用ミルクが使われるようになってきたのですが、ふつうにどこでも購入できるようになる、まさに液状乳児用ミルク元年になりそうです。

 

阪神大震災後から、何度もこの液状乳児用ミルクを広げようと声をあげていた方たちの動きがようやく大きなうねりになって社会を動かしたのだと思います。

末永理恵さんをはじめ、動いてくださった方々には頭が下がります。

そして、大事なことは、たくさんの現状を伝える人たちのニーズから実現したことだと思います。

 

今までイメージしていた半年の消費期限ではなくて、1年間は保存可能だそうですから、新生児からそして離乳食が完了する頃まで、ちょうど乳児期の約1年間は保存できるようです。

災害時のフェーズ1(72時間)のぶんを各家庭で備蓄するだけでも、心強い備えになるのではないかと思います。

 

*歴史を繰り返さないために*

ただ心配なことは、新しいことや変化を受け入れる時には、それに対する抵抗が生まれることです。

ほとんどは、気持ちの問題なのだと思いますが、だからこそ相手の気持ちを変えるのは難しいものですね。

 

先日紹介した「明治期の東京に於ける牛乳事業の発展と経過の考察」にも、こんな箇所がありました。

反面、食生活上、牛乳を日常的に飲用する習慣もなく、主として在留外人や上層階級および乳児病弱者のみで一般的には牛乳を忌避した時代でもあった。

明治時代、牛乳が広がりはじめて30年ほど経った頃に、「牛乳中毒論」があったことが書かれています。

しかし、牛乳の栄養的価値を忌避する当時の書籍には、牛乳中毒論(明治38年・高橋逸馬東京食料院々長・後潤閣)があった。現代の牛乳科学から見るとかなり懸離れているが、カリュウム及びナトリュウムが牛乳中毒の弊害になると指摘した59頁から構成されている書籍である。

 

「白い牛乳、白い砂糖は危ない」「腐らないのは添加物のせい」といったフードファデイズムや誤った知識が根強く残っていくのは明治時代も今も変わらないのかもしれません。

 

母乳かミルクかの一見「科学的な装いの議論」もまた、ミルク受難の歴史を繰り返す大きな理由だったのではないかと思います。

 大人の気持ちは脇に置いて、 新生児や乳児あるいはそのご家族も含めた生活史を地道に観察することで初めて、「授乳に対する科学的なとらえ方」が生まれるのではないかと思います。

 

今回の液状乳児用ミルクの国内販売開始にあたって、今までの失敗を繰り返さないようにと願うばかりです。

 

 

 

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