12日から13日にかけて通過した台風19号の被害の全容が徐々にわかってきて、その広さ、深刻さに、今こうして日常生活を送れているのはたまたま運がよかっただけだと、勤務先の近くの大きな川がいつでも堤防が破綻する可能性があったことを思い出しては戦慄しています。
今回の報道で、8年前とは格段に変化したこ とを感じました。
NHKは24時間、いつものように粛々と状況を伝え続けてくださって本当に助かりました。そして民放の各局では要所要所で集中して台風関連のニュースを伝えて、それ以外はあの文字スーパー(L字型画面)がない時間帯もあって、通常の放送をしていました。
日常の番組に気持ちを切り替えられて大人でもちょっとホッとしたので、きっと小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では助けられたかもしれません。
そして、どの局のアナウンサーも落ち着いた声でレポートしてくださっていた印象です。以前のように「スクープ!」というニュアンスが、災害時の報道から減ったように感じました。
*この情報を必要としているだろうか*
さて、発生直後の「フェーズ0」そして「発生72時間以内のフェーズ1」をすぎた昨日17日でしたが、NHKのニュースからまた紙コップが聞こえてきました。
検索しても17日のニュースの内容は見つけられませんでしたが、14日に放送された「台風19号 避難所での注意点 助け合って乗り越えよう」の「避難所の注意点:赤ちゃん」と同じものでした。
専門家でつくる「日本新生児成育学会」では、哺乳瓶が使えない時のミルクの飲ませかたや赤ちゃんの保温の方法について、ホームページで公開しています。
それによりますと、哺乳瓶がない場合は紙コップを使い、赤ちゃんが目覚めている時に縦抱っこして、紙コップを赤ちゃんの下唇にあてて、ゆっくりと少しずつ飲ませるとしています。
また、粉ミルクが足りない場合は、コップ1杯の湯冷ましに砂糖大さじ1杯を溶かしたものやおかゆの上澄みを飲ませると、一時的に脱水を防ぐことができるとしています。
こうした呼びかけを私が初めて耳にしたのは、東日本大震災の直後でした。一般の人の「善意の行動」かと思ったら、小児科医の先生方の中からもあったことに驚きました。
東日本大震災では、実際に紙コップで服を汚しながら飲ませたり哺乳瓶の消毒ができない状況に心をいためた海外在住の方々が、液体ミルクだけでなく使い捨て乳首もつけて支援物資として送ってくれました。
赤ちゃんだけでなく、子どもや大人まで栄養を取ることができたようです。
それから6年経って、九州北部記録的豪雨の時にもこの情報がライフライン情報で流されていました。
今年は念願の液状乳児用ミルクが発売されました。
ですから呼びかける内容が変化すると思っていました。
そして小児科医の先生方の団体なら、災害の多いこの国では調乳済みミルクの本体に使い捨て乳首をすぐにつけられるタイプのものが必要だと言ってくれるかと思っていました。
なんで、紙コップなのだろう。
なんで今時、重湯やら湯冷ましに砂糖をくわえるといった情報なのだろう。
赤ちゃんに必要な災害時の情報とはなんだろう。
「赤ちゃんに優しいとは」まとめはこちら。
「紙コップ」について書いた記事はこんなものがあります。(本文と重複するものもあります)
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