帝王切開で生まれる 2 <生まれる直前の胎児心拍モニタリングがない>

お母さんのお腹が切り開かれた部分から、赤ちゃんの体の一部が見え始めます。


頭位であれば髪の毛とともに頭の一部が見えますし、骨盤位であれば赤ちゃんの腰のあたりから見え始めて最後に頭が出ます。


ほんの一瞬の静寂のあと、赤ちゃんの産声が聞こえます。


時間にするとわずか数秒から10秒ぐらいなのですが、すこしぐったりしているような赤ちゃんが動き始めて第一啼泣を聞くまでは、もっと長く感じる緊張と期待の混じり合った時間です。


これが帝王切開での赤ちゃんの誕生です。


あとはインファントウオーマー上で羊水や血液を拭き取り、全身の観察をしたり計測をするのは経膣分娩の赤ちゃんと同じです。


もちろん出生の瞬間の緊張は経膣分娩も同じなのですが、経膣分娩と帝王切開では大きく違うことがあります。


そのひとつとして、経膣分娩では生まれる瞬間まで分娩監視装置で胎児心拍を聞くことができるのですが、帝王切開の場合には腹部を消毒するので手術の準備をし始めると出生まで、その胎児心拍を聞くことができません。


特に胎児機能不全で緊急帝王切開になる場合、胎児の苦しさを知る唯一のデーターである胎児心拍数をモニターできない時間が、出生直前まで続きます。


生まれる直前の胎児の状態がわからないまま、祈るような気持ちで赤ちゃんが生まれる時間をまたなければならないのです。



ずっと、こんな気持ちで帝王切開というのは行われてきたように思っていたのですが、ブログを書き始めて分娩監視装置が広がり出した時代の前後の歴史を行ったり来たり考えているうちに、こういう帝王切開の雰囲気もわずか20〜30年ぐらいのことなのかもしれないと思うようになりました。



現在の周産期医療で胎児の苦しさ(ストレス)を推測するデーターはこの分娩監視装置と、出生後に臍帯血からの血液ガス値が主な方法ですが、その出生直前の胎児心拍記録が全くとれないのが帝王切開によって生まれるということなのかもしれません。


そのうちに、この帝王切開でも出生直前まで胎児心拍がモニターできる時代がくるのでしょうか。


それはそれで、胎児心拍の高度徐脈が頻発して超緊急帝王切開になるような時にはこちらの心臓にも悪いような気もしますが。


いずれにしても、帝王切開で生まれる赤ちゃんが胎児から新生児になる劇的な瞬間の、胎児心拍パターンはわかっていないということは言えそうです。