思い込みと妄想 23 <菌をスプレーするとどうなるか?>

先日、外で食事をしていた時のこと、後ろに座っていた20代から30代くらいの女性2人が熱心に話をしていたのですが、「抗体」とか「血液」の単語が聞こえて来たので、医療従事者なのかなとなんとなく会話が気になっていました。


そのうち、1人が「消臭スプレーならEMスプレーがいいみたい」と言ったのが聞こえたので、まるで漫画のようにぐっと喉につまったのでした。


後ろを振り返ってみたいという気持ちをずっと抑えながら、食事を続けました。


<EM菌とは>


EM菌という言葉を初めて知ったのは、今から10年ぐらい前でした。
いつも前を通るクリーニング屋さんに、なんでも汚れが落ちる奇跡的な洗剤のようなチラシが貼ってありました。


まだその頃は、「ニセ科学」という言葉を知らないぐらい怪しいことに対しての問題意識もなかったのですが、なーんとなく「あ・や・し・い」と感じたのでした。
衣服についた汚れを落とすのは専門店に出しても難しいのに、それが簡単に落とせるとなると、クリーニング屋さんだって商売あがったりになるかもしれない画期的な商品になる可能性がありますからね。


その後、助産師の中に広がる代替療法に危機感を持っていた時にkiulogに出会ったのですが、そこでEM菌についても議論されていたことを知りました。


「ニセ科学とつきあうために」の「9. EM菌」では以下のように説明されています。

 EM菌は琉球大学の教授だった比嘉照夫さんが作られたもので、たくさんの微生物を共生させた「微生物資材」とされています。その効果は生ゴミ処理・土壌改良にはじまり、無肥料栽培・河川の浄化、さらには健康までおよそあらゆる分野におよぶとされます。
 もちろん、世の中にそんな万能なものはありません。


kikulogを読み始めたのが2009年でしたが、「菌」という病気を連想させるものを散布したりすることに普通は抵抗や不安を感じるでしょうから、このEM菌はじきに売れなくなるのではないかと思っていました。
ところが、じわじわと広がっているのを感じるこのごろです。



<やってもやらなくてもかわらない・・・どころか>



「EMスプレー」って何?と検索してみたら、消臭スプレーとしてだけでなく浴室のカビ防止などにも効果があるように書かれています。


「化学物質の入っていない」「無害の」ペットの消臭スプレーでは、ペットのグルーミングやお散歩のお尻拭きなどに使うらしく、「一緒に暮らす、子供たち、私たちの体や食品に触れても大丈夫」と書かれています。原料は「食品で使われている乳酸菌や納豆菌と同じ微生物や酵母」が使われているそうです。


たしかに、乳酸菌や納豆菌、健康そうなイメージですが、冷蔵庫に保存してしばしばなやまされるのが「腐敗」です。


EM菌、大丈夫かなあと検索したら、「消臭EMスプレーの恐怖」というブログ記事があり、「今回わかったことは『昆虫マットに消臭スプレーをしない方が賢明だ』ということでした」という、消臭どころか腐敗臭が酷かったという貴重な経験談がありました。
さもありなん、という感じですよね。


2004年の記事なのですが、その後、腐敗しないような改良が可能だったのでしょうか。


また、「EMWを使って快適お掃除を始めましょう」というサイトでは、浴室の掃除について書かれています。


浴室では「湯アカや飛び散った石鹸かすを冷水でさっと流すだけでも、汚れ具合が随分違ってくるのでお掃除が楽になります」、排水口は「お風呂上がりに排水溝の髪の毛や石鹸カスを取り除きます。水で細かいカスを洗いながしましょう」、そしてバス小物は「お風呂上がりに、シャワーでさっと洗い流します。スポンジでこすり水で洗い流しましょう」とあり、それぞれその後に「EMスプレーをしましょう」と書かれています。


いやあ、これってお風呂のあとに石鹸かすをよく流して、水滴を遺さずに拭くだけで大丈夫なことですね。
私自身、もう20年以上この方法で浴室も、浴室の小物も新品のようにきれいに維持していますし、なんたってマツコ・デラックスさんや福山雅治さんも実践してますからね。


「EMスプレー」はやってもやらなくても変わらないということではないかと。


それにしても「善玉菌」が、悪臭や汚れの原因になっている「悪玉菌」をやっつけるというのは、人の心をぐっとつかむのかもしれませんね。



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