観察する 5 <「5つの泣き声」でわかる?>

生まれてしばらくは「泣く」ことに家族が振り回され、赤ちゃんを泣き止ませる方法をなんとかしたいと思わせる、やっかいな存在と思われているのが赤ちゃんや子どもなのかもしれません。


そういえば10年ほど前にも、イタリアかどこかの会社が「赤ちゃんの泣き声を聞き分ける器械」を発売してネットで話題になった記憶があります。
「お腹がすいた」「眠い」「暑い」とあともうひとつぐらいの答えしかなかったと記憶しているのですが、それで「赤ちゃんの言っていることがわかる」と思い込むことができて、物が売れるなんてすごいなあと、変に感心したのでした。


その後はぱったりと聞かなくなったので、やはり使い物にはならなかったのでしょうね。


新生児や赤ちゃんの泣き声を聞き分けたり、その時の状態を観察してその中にある法則性を見いだすのは容易ではないことだということなのでしょう。


最近では「赤ちゃんが泣き止まない?! この【5つの泣き声】を聞き分ければ赤ちゃんの伝えたいことが分かる!」という、「おしいなあ〜」と思う記事がありました。


 Dunstan Baby Language(ダンスタン・ベビー・ランゲージ)は、オーストラリアのPriscilla Dunstan(プリシラ・ダンスタン)が発見した「赤ちゃんの5つの泣き声で欲している物を見分ける方法」です。


 プリシラさんは、聞いた音を映像記憶のように正確に記憶できる能力を持っており、それによって赤ちゃんの泣き声を状況と共に記憶し続けた結果、ある法則に気づいたと言います。


泣き声の性質から、何かの法則を見いだすのは客観的で科学的な手法とも言えそうです。


プリシラさんは「音に対するフォトグラフィックメモリーという能力によって、赤ちゃん(新生児)の泣き声に秘められた意味を解き明かしました」とあり、「泣き方の違いは、赤ちゃんの舌や口の形の反射運動によるものであり、おなかがすいた、眠い、などの生理的な欲求によっておこる反射運動は、世界中のどの赤ちゃんにも共通するものです」として、次の5つに分類したそうです。


Neh(ネエ)=おなかがすいた


"N"の音は、吸引(吸啜)反射(吸乳反射)から来る。おっぱいを飲むときみたいに、赤ちゃんが口のてっ辺に舌をつけるとできる音。

"Heh"(ヘエ)=快適じゃない、おむつが濡れている、汗などで気持ちが悪い


暑い・寒い・オムツが気持ち悪いとかそういう意味。

Eairh(エアー)=胃腸内のガス(おなら)、お腹の張りによる痛み


泣くというよりも、唸り声っぽい。同時に足を上げたりすることも。

Eh(エッ)=げっぷがしたい


空気をお腹から出そうとする時に出る音。

Owh(オオ・アオ)=眠たい、疲れた


あくびするのと関連しているとか。


添付されていた映像を見てみましたが、この5つの音の違いを親が聞き分けられるようになるのには相当時間がかかることでしょうね。



毎日のように生後数日までの新生児の泣き声を聞いていると、たしかにこういう5つぐらいの違いもあるかもしれないけれど、もっと違うトーンもあるような気がします。ただ、そこは客観化が難しいところ。


それと泣き方も、たとえば最初は"He"とか"Neh"のおだやかなトーンだったものが、素早く対応しないと"Gyaaaah"になることも。
また赤ちゃんによっては、どのシチュエーションでもあまり声を出さない子もいれば、すぐに火がついたような激しい声になる子もいますね。


たしかに世界共通のところもあるのかもしれませんが、赤ちゃんの個別性や生後日数による変化のほうがもっと複雑なので、大人は右往左往させられるのかもしれません。


そして、もちろんこうした観察が大事なのですが、「赤ちゃんはお腹が満たされて眠るもの」といった大人の思い込みから「うまく飲ませる方法」「眠らせる方法」になりやすいのではないかと思います。


そう、育児は母乳から始まるかのような思い込みと方法論ばかりになりやすいのでしょう。


赤ちゃんは飲みながら排泄をすることを重視すれば、もう少し違った関わり方が見えてくるのではないかと思います。


でも何よりも、拙速に理論化したり方法論化せずに、新生児や赤ちゃんの声を観察する気持ちが大事なのかもしれません。





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