気持ちの問題 62 マスクに揺れた4ヶ月

2週間ほど前に、いつも利用するスーパーで箱入りのマスクが積まれていました。とうとう購入できるようになったとカゴに入れてレジに進みました。4000円近い値段が打ち込まれるのを見て、ハッと我にかえりました。

夜勤明けでボッとしたまま、値段を確認していなかったのでした。「ごめんなさい。戻してください」と平謝りで、店員さんにお手数をかけてしまいました。

 

先日、ついに10枚入りで500円のパックがたくさん納品されていました。60枚で500円だった頃に比べるとまだまだ高いことと、信頼できる製品かどうか外装を見てもわからない商品がまだ多いですが、以前のように店頭からなくなることはそろそろ終わりかとホッとしたら、やはりそれ以降また棚は空っぽになりました。

 

思えばマスクに翻弄された4ヶ月間でした。

物がないだけでなく、マスクに効果があるのかという社会の混乱でした。

 

*「症状がなければつける必要はない」から「予防的」につけるへ*

 

それまでの感染標準予防対策の「症状がある人がマスクをつける」「症状がある人と接する場合はマスクをつける」に沿って、自分自身が咳が出やすい時や接する患者さんが風邪やインフルエンザ、その他の感染症の可能性がある場合にはマスクをつけていました。

ですから2月中ぐらいまでは、日常生活でも勤務中でもほとんどマスクをつけることはありませんでした。

2月から3月はまだ通勤中は混雑していましたが、むしろそれまでよりも咳もくしゃみも聞かれないような車内でしたし、電車内でおしゃべりすることもなかったですからね。

 

おおざっぱな記憶ですが、3月ごろになって勤務中もマスクをつけるようになりました。

ひとつは、無症状感染者がけっこういるらしいということがわかってきたので、いつ飛沫感染から感染したり、濃厚接触者になってしまうか予測できないためでした。

 

ただ、マスクをつけたからといって感染を予防できるわけではなく、マスクに触れた手にウイルスがついていたり、正しくマスクをつけていない人であればいくらでも飛沫を浴びる可能性もあります。

マスクに「予防効果がある」わけではなく、「多少、予防の意味がある」という理解でした。

 

*相手の安心感のために「意味」が出てきた*

 

3月中旬ぐらいまでは、勤務中以外はマスクをつけていませんでした。

この頃になると、むしろ「症状がない人はマスクをつける意味はない」という理解の人が一時的に増えたのか、マスクをしない人が微妙に増えた印象でした。

反面、手作りマスクの話題や政府がマスクを配布する話が出てきて、「やっぱりマスクは『効果がある』」と受け止める人も増えてきたのか、ネット上でもマスクの話題が頻繁に上がってきました。

 

その頃の私はちょっと踏み絵を試されている気分でした。

というのも感染予防対策の「血液、体液は感染因子であり、それが付着した物品は再利用はしない」という医療の原則が身についてきたので、マスクを洗って再利用することにとても抵抗がありました。

 

ところが、「マスクをしていない客に接しなければいけないことが辛い」といった店員さんの声を目にするようになりました。今のようにビニールの仕切りはまだありませんでしたから、それは確かにそうだろうと思い直して、買い物時にもマスクをするようになりました。

今回はさすがに、「私自身の飛沫も人を不安にさせる」あるいは「感染源になりうる」のでマスクをする方が良さそうというあたりに変化したのが4月に入った頃でした。

 

ただその頃には手元の使い捨てマスクの残量も心細いことになり、初めて洗って使ってみました。結構、耐朽性があって洗濯機でも大丈夫でした。

 でも今もまだ、医療の感染予防策の意味からもマスクは使い捨てにしたいという気持ちがあります。ですから、ぼちぼちとマスクが供給され始めて、ちょとホッとしています。

まあ、医療現場と家庭や日常生活では清潔・不潔の境界線が異なりますし、非常時だからレベルを下げざるを得ないですからね。

 

 

揺れたのは私だけでなく、WHOの方針とか世界中のマスクについてのニュースで、マスクの「効果」と表現されているのを見ると、これまでの科学的根拠に基づく医療の意味はまだまだうまく伝わっていないから情報が錯綜するのかもしれないと思えてきました。

 せめて「飛沫を飛ばさないという意味はあるけれど、疾患を予防するかどうかの効果はわからない」という表現が好ましいのではないか、そんなマスクの混乱ぶりを感じた4ヶ月でした。

 

 

マスクをしても、正しくマスクを取り扱っているかというあたり。

やっぱり手洗いが十分か、という話になりますからね。

 

 

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