アドバンス助産師とは 12 <「助産師個人認証制度」?>

前回の記事でアドバンス助産師認証制度の制度概要を紹介したのですが、そのサイトが「助産師個人認証制度」という初めて聞く名称になっていて、また驚きました。


アドバンス助産師の「正式名称」は、「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー/CLoCMiP)レベル3認証制度」だと認識していました。
つまり、ようやく独り立ちした程度の経験で「一人前」と認証する制度だと。


ところが、いつの間にかそのあたりもうやむやになった「助産師個人認証制度」という名称になっています。
国家資格の免許証と勤務履歴ではダメなのでしょうか?


本当に、日本の助産師の方向性がどこでどのような人たちによって決定し進められているのかわかりにく業界です。


<日本助産評価機構とは?>


このアドバンス助産師の認証機関日本助産評価機構のようです。


この団体については、設立当時から名前は知っていました。
2007年に「特定非営利活動法人」として設立されたとありますが、その頃、私は助産院の安全性について恥ずかしながら助産師としてようやく気づかされた時期でした。


いいえ、「助産院の安全性」というより、「助産師だけでお産を扱おうとする動きの安全性」と言えますが。


ですから、助産所助産師だけで分娩を扱う施設)の安全性を第三者的に評価するという組織の出現に、ちょっと期待したのでした。
リスクマネージメントが取り入れられて、助産所・自宅分娩の安全性や問題点が可視化されるだろうと。
それまでは、助産師でさえ助産所や自宅分娩の医療事故は伝聞でしか知り得なかったので。


その後、期待して時々このHPを読んでいますが、9年ほど経過した現在、「認定施設」として上げられている助産所は5カ所のみです。



現在、有床(入院設備のある)助産所や自宅分娩だけの出張助産所が何カ所あるのか正確なことはわかりませんが、2007年当時は有床助産所だけでも400カ所前後はあったと記憶しています。
まあ、こうした全体の助産所数(有床・無床)の全体像ぐらいは把握できるような情報さえ、私たち助産師にはなかなか手がとどかないのですけれど。


その後、この助産所の第三者評価はどのようになっているのか知りたいところです。


<その認証機関の実態はどうか>



今回のアドバンス助産師認証制度は、大きく二つの疑問がありました。


ひとつは今までも何度か書いてきたように、たかだか分娩経験100例程度の人を認証することに意味があるのかというところ。



もうひとつは、この認証機関が信頼できる団体なのかということです。
「役員及び評議員名簿」には看護大学教授とか、周産期センターの看護部長などのお名前が上がっています。
末端の施設で働く1スタッフの私には、このあたり助産師の世界の政治的な力学はよくわからないのですが、お見受けする限りは「正常なお産は助産師の手で」という思いが強い方々の印象です。


毎日粛々と産科施設で働いている周囲の同僚を見ても、私たちが求めていることはそれではないのですけれどね。


でもいつの間にか、そういう方向性の一民間団体が助産師全体の認証システムまで動かそうとしていることに、なんだか怖さを感じるのです。
ええ、感覚的な話で申し訳ないのですが。


助産師個人認証制度」ってなんでしょうか?
本当に現場はそれを必要としているのでしょうか?
そんな制度を頼んだ覚えはないという、私たちの声はどこに届くのでしょうか?


そして、この団体を監督しているところがあるのでしょうか。
昨年末の初めてのアドバンス助産師認定で、少なくとも2億円以上の登録料が集まっているのですから。



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