アドバンス助産師とは 9 <はしごをはずされないために駆け込み申請・・・27年・28年の暫定処置>

私が「何か認証制度が始まるらしい」ということを同期の助産師から聞いたのが、2014年でした。
こちらの記事に書いたように、日本看護協会助産師クリニカルラダーができたばかりの頃です。


「え?なにを申請するの?」と尋ねたら、分娩介助の記録と研修に参加したことなどをまとめる必要があるとのことでした。
大学病院に勤務している彼女は、「来年(27年)に申請しておかないと、それ以降は審査が厳しくなって、私みたいに以前の職場での分娩介助記録が残っていない人は申請しにくくなるから」と言っていました。


へ〜、大変そうだなあと人事のように聞いていました。


まあ私はあと10年ぐらい働いたら、助産師をリタイアしてもいいかなと思っていましたし、産科診療所に勤務している限り、たかだか100例程度の分娩介助経験の証明を勤務先に提出する必要性はないからです。


それにしても、私が分娩介助記録をノートに残していると、いつも周囲の助産師から「え〜すごい」と驚かれるくらいなので、「分娩介助経験」をみんなどうやって証明するのだろうと気になっていました。


<自己申告でもOKらしい>



昨年の8月に申請が始まったようですが、その直前まで何をどう申請したらよいのか混乱している様子が日本助産評価機構の「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)レベル3の認証制度FAQ(2015/07/27版)」をみるとわかりました。


たとえばこんな感じ。

今はNICUに勤務しています。
これまで、個人の産婦人科、病院と10年以上の産科病棟のキャリアがあり、分娩件数を数えることはできます。分娩件数の自己申告だけでもいいでしょうか?また分娩介助は何年も前のでもいいでしょうか?
→分娩件数は自己申告ですが、申請の書類に所属施設の承認が必要です。分娩介助件数のカウントに対しては期間を現行では限定していません。

あるいは、退職とか職場自体が閉院になるなど諸事情がある人からの動揺も伝わってきます。

現職場は平成27年5月31日をもって閉院します。今後ラダー申請を行うにあたり、実施例数承認書は勤務した病院ごとに必要でしょうか。
それとも、個人でデーターを取っておき、申請時に勤務している職場でまとめて承認してもらえばよいでしょうか。
→実施例数はラダーレベル3施設内承認に必要です。ポートフォリオとして個人データーをとっておき、レベル3承認を受ける時に評価する上長にご呈示ください。

職場を3月で退職しました。前の施設で認証が得られない場合の個人の評価はどうすればよいでしょうか?再就職もしていません。
→まずは前に就業していた施設でラダーレベル3の実施例数等の承認をしてもらえるか確認し、承認してもらってください。どうしても前に就業していた病院の承認が困難なときは、機構にお申し出ください。


前の勤務先に承認してもらう手続きなんて、考えただけでも大変そうですね。諸事情があるのでしょうし、ただでさえ退職や再就職というのは大変な時期なのに。


でも自己申告で大丈夫という矛盾は、ほんとうにわかりくい制度です。


<「暫定措置」の対象になるひと>



さて、上記でリンクしたQ&Aにところどころ「暫定措置」という表現があります。


それは冒頭でリンクした記事で紹介したように、2015年6月の看護協会ニュースでは「2015・16年に限り」以下の人たちの申請にも対応するとしているものです。

助産学担当教員(産科臨床経験5年以上の助産師)
・看護管理者(臨床経験10年以上、うち産科臨床経験5年以上の助産師)
助産所解説者(開業届けを出している助産師)


分娩経験数だけでなく、「妊婦健診200例以上」などの経験の申告が求められるわけで、臨床から離れている人たちには相当ハードルが高いものと想像ができます。


そういう人たちには2015年と16年だけは配慮しますよ、ということなのでしょうか?


<当初の予定数を大幅に上回る>


2015年2月13日づけの朝日新聞の「熟練助産師に認証制度 関連5団体、産科医不足補う狙い」という記事では、「機構は、経験年数5〜7年以上の助産師が取得すると想定。第1号は12月にも、500人規模で誕生するとみられ、『アドバンス助産師』として区分する」とあります。


このレベルの助産師を「熟練」と呼べるのか、まして産科医不足を本当に補えるのかという疑問がまずありますが、それはさておいて、2月の時点では500人規模だったようです。


おそらく、上記の「暫定措置」の対象者だけでもそれくらいになりそうです。


ところが6月になると、こちらの記事に紹介したように、日本経済新聞では11月に800人規模で認証されるとなっています。


そしてふたを開けてみたら、当初の10倍の人数になったようです。
2016年1月26日付の産経ニュースではこう書かれていました。

昨年8月に受け付けを始めたところ、全国3万人余りの助産師のうち想定の2千人を大幅に上回る5723人が申請し、承認事務も遅れる事態になった。日本看護協会の福井トシ子常任理事は「意欲ある助産師がこうした機会を待っていたのでは」と歓迎する。


え?
「2000人規模」という数字は初めて見たのですが、大本営発表ってこういうことを指すのでしょうか。


Q&Aを見ても、大規模な施設に勤務する助産師の話からも、「意欲ある助産師」というよりはアドバンス助産師のレベルを遥かに越えた熟練スタッフが「とにかく自己申告できるのは2年しかなさそうだから、はしごをはずされる前に」と焦った結果に見えるのですが。


何を認証されたのか冷静に考える間もなく。





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