2015年7月31日づけで出された日本看護協会のアドバンス助産師に関してのNews Rleaseには、こう書かれています。
CloCMipレベル3認証制度は、日本看護協会が開発したCloCMipを指し、CloCMipレベル3に達していることを客観的に評価する仕組みです。書類審査とWEB上での試験に合格すると、「アドバンス助産師」として認証されます。5年ごとの更新制で、助産師が継続的に自己啓発を行い、専門的能力を高めることにより、妊産褥婦・新生児に対し、安全で安心な助産ケアを提供できること、そして社会や組織が助産実践能力を客観視できることを目的としています。
「5年毎に更新する」ということは、さらに5年経験を増やしても名称は「アドバンス助産師」のままということなのでしょうか。
検索していると、今回のアドバンス助産師に認証された助産師がいる施設のHPに、「最高レベルの助産師と認定されました」と紹介しているところもありました。
「アドバンス助産師」がどのレベルかについては、こちらの記事で看護協会の助産師クリニカルラダーを紹介しました。
38ページから41ページにかけてクリニカルラダーの表がありますが、「レベル新人」「レベル1」「レベル2」「レベル3」そして「レベル4」のうちの「レベル3」を指しています。
「アドバンス助産師」は「最高レベル」ではなく、まだレベル4があるのですが5年後に申請してもまたレベル3と認証されるシステムのようです。
<究極のレベル4>
では、そのうちにレベル4の認証制度ができるのでしょうか?
レベル4についてはこちらの記事で紹介しましたが、このクリニカルラダーを作った人たちの思想の根幹といえるものです。
「レベル4」の到達目標はこのように書かれています。
1. 創造的な助産実践ができる
2. 助産外来において、指導的な役割と実践できる
3. 院内助産において、指導的な役割を実践できる
4. ローリスク/ハイリスク事例において、スタッフに対して教育的なかかわりができる
4番目は納得できるのですが、最近はむしろ10年やってわからなかった怖さを20年やって知るのがお産」とますます怖さを感じています。
後輩に「教育的なかかわり」ができるかといえば、自分の失敗を伝えるぐらいかもしれません。
一番ひっかかるのが「創造的な助産実践」という表現です。
ラダーの39ページの「マタニティケア能力」の「実践」にもう少し具体的に書いてあります。
1. 助産実践において独創性と刷新性を発揮できる
2. 多様なアプローチを組み入れて看護・助産ケアができる
3. 緊急事態にリーダーシップを発揮し対応できる
4. 常に教育・指導的役割が実践できる
5. 教育・指導的役割のスタッフを支援できる
「アドバンス助産師とは 1」の記事に、タカ派の麻酔科医さんが的確なコメントをくださいました。
一番気持ち悪いのは、創造的な助産実践。臨機応変なり、柔軟なというならわかりますが、創造的という時点で理論的な根拠すらふっとばしてしまいそうな感じです。
30年以上も前、私が看護学生の頃から教わって来た「対象の個別性に合わせた看護」ではいけないのでしょうか?
タカ派の麻酔科医さんへの私の返信を整理すると、こんな感じです。
(誤字などを訂正しました)
助産所でおきた事故、あるいは助産師が勧めたさまざまな代替療法や出産時の演出(水中分娩、フリースタイル分娩、カンガルーケア、あるいは胎盤をたべさせる)などに対して、その安全性を検証するシステム、あるいはインシデントレポートを活かしたリクスマネージメントも感じられない言葉だと思いました。
「創造的な助産実践」なんてあると思うこと自体が思い込みによる妄想そのものではないかと。
「なんだかよさそう」という雰囲気で出産周辺の演出をこれまでも生み出し続けて、結局は事故が起きているのに、対応が後手後手になってしまったのではないでしょうか。
看護協会のクリニカルラダーの「専門的自律能力」「安全」の「レベル4」に、「インシデント・アクシデント報告から、看護単位における問題を発見できる」とあります。
これに関しては、かなり私はレベル4に到達できているかもしれません。
同僚や妊産婦さんに過去の事故などを説明して、「それは効果が実証されていないよ」「あやしいよ、それは」「信じ込んだり、人に勧めたりしないほうがいいよ」と釘をさせるようになってきましたから。
このまま「アドバンス助産師」に上の認証制度ができるとしたら、もしかしたら「カリスマ助産師」になってしまうのではないかと危惧しています。
なんだか中世の魔女になりそうですね。
「アドバンス助産師とは」のまとめはこちら。
「助産師の歴史」まとめはこちら。
「助産師と自然療法そして『お手当て』」のまとめはこちら。