「早期母子接触」ってなんですか? 5 <「早期母子接触」と「早期の母子接触」>

厚生労働省から平成27年12月に、「早期新生児期における早期母子接触及び栄養管理の状況」についての調査報告が出されています。


先にその全体版を読んだのですが、「集計結果の概要」には「早期の母子接触を実施している施設は、88.2%であった」と書かれています。


アンケートに応じた1680分娩施設の9割近い施設で、出生直後の新生児を裸のまま母親の胸の上にのせているのかと、とてもびっくりしました。


私の勤務先では希望されるお母さん自体が少ないのでほとんど実施していませんが、「早期母子接触」を除けば、ごく普通の標準的な産科施設だと思っていました。
もはや少数派の施設なのでしょうか?
それとも、たまに実施するだけでもこの9割に含まれるのでしょうか?



ところで、「早期母子接触」ではなく、「早期の母子接触」と書かれています。
この違いは何でしょうか?
気になりますね〜。


<「用語の説明」より>


用語の説明では、2012年(平成24年)に日本周産期・新生児医学会、日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本小児科学会、日本未熟児新生児学会、日本小児外科学会、日本看護協会日本助産師会)から出された「「早期母子接触」実施の留意点」に示されている「実施方法」が書かれています。


「実施の留意点」に示されている経膣分娩を対象とした以下の「実施方法」のこと。


<実施方法>
◆バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
◆出生後できるだけ早期に開始する。30分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。
◆継続時間は上限を2時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。
◆分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対するなんらかのサポートを講じることが求められる。


[母親]
・「早期母子接触」希望の意思を確認する
・上体挙上する(30度前後が望ましい)
・胸腹部の汗を拭う
・裸の赤ちゃんを抱っこする
・母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える


[児]
・ドライアップする
・児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする
・温めたバスタオルで児を覆う
・パルスオキシメーターのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにしない
・以下の事項を観察、チェックし記録する
(以下、略)


これが「早期母子接触」の定義と言い替えてもよいと思われます。



<「早期の母子接触」とは?>



さて、「早期新生児期における早期母子接触及び栄養管理の状況」の簡略版の「集計結果のポイント」にはこう書かれていました。


[早期母子接触
○出生直後から早期に母子を接触させていると回答した施設は88.2%
「「早期母子接触」実施の留意点」(平成24年、日本周産期・新生児医学会等)に示されているとおりの早期母子接触を実施している施設は36.0%

どうやら、「早期母子接触」と「早期の母子接触」はニュアンスが違うことのようです。
それを踏まえて全体版を読みこなさなければ、結果が違って見えることでしょう。


普通に服を着せてバスタオルにくるんで分娩台で抱っこや授乳をすれば、「早期の母子接触」になるようです。


なんだか簡単なことを難しくしていますよね。
そして、数字には注意が必要ですね。





「早期母子接触ってなんですか?」まとめはこちら