数字のあれこれ 13 <分母が増えると>

父の面会に月に3回ほど行くようになってもうじき2年になります。


一勝九敗に書いたように、平日だけでなく土日も結構混んでいるので、相変わらず座席に座れるのはこの確率です。


それだけでなく、往復した回数(分母)が増えるに従って、アクシデントに遭遇する回数も増えてきました。
あらかじめ運行状況は確認してから家をでるのですが、乗っている途中で人身事故のために電車が止まったことが2回。こればかりは運転再開までじっと待つしかありません。



また、父の暮らしている地域は雨が多いので、これも天気予報を確認して大雨になりそうな日は行かないようにしているのですが、予想外の雨で電車が止まり引き返したことが1回。


いやはや、計画的に行動していても、分母が増えるといろいろなことに遭遇するものだなあと実感しています。


数字が得意な人だったら、ちゃちゃっと計算してなにか法則性のようなものが見えてくるのでしょうか。
数字が苦手な私は、感覚的に「経験(分母)が増えると、アクシデントに合う確率が高くなるのだろうな」ぐらいしかわからないのですが。



<「5000」の意味>


1週間分の録画予約をしていたら、近々、助産院の放送があるようです。
その番組説明に、「23年のキャリアを持つ」「5000人以上の子どもを取り上げた」と書かれていました。


「取り上げる」という言葉については、以前こんな記事を書きました。

「何を『主導』したいのか」
「赤ちゃんを『取り上げる』こととトリアゲバアサン
「数を数えるな」


分娩には児の娩出に直接かかわる直接介助と、周囲でサポートする間接介助がありますが、両者を合わせて「分娩に立ち会った」という意味であれば、「5000人」も不可能ではないと思います。


もし自分が「主導的」な立場で児娩出を介助したことを「取り上げた」として表現しているのであれば、現代の助産師としてこの数字に到達することは不可能ではないかと、あれこれ計算してしまいました。


開業して8年のようですが、取り扱い分娩件数がかなり多い助産所でも年間200件程度です。
それを全部、自分で「取り上げた」として、約1600件。
ただ、開業直後からそんなに分娩を扱えることはまず不可能でしょう。
それ以外の3400件を病院時代の15年で経験したとしたら、1年に平均して226件の分娩介助をした計算になります。


226件/365日だから毎日1件の分娩に当たっていれば可能ではないか、と思われるかもしれませんが、分娩施設に勤務していればあり得ない数字だと体感的にわかることでしょう。


日本国内で分娩数が多い施設は、年間2000件前後の分娩を取り扱っています。
その施設の年間分娩数の10分の1を一人の助産師が取り上げるというのは、どう考えても無理です。


「5000人を取り上げた」というのが、分娩に立ち会ったことも含めているのではないかというのが、この番組宣伝を読んでひっかかったのでした。


まあ「5000件ぐらい分娩に立ち会った」のであっても分母がそれくらいになれば、異常や緊急事態にも遭遇する確率が高くなって、「10年やってわからなかった怖さを20年やって知るのがお産」という気持ちになるような気がしますが。






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