水のあれこれ 49 <マンボウの泳ぎ方>

何十年ぶりに水族館へ行ってから、水族館のおもしろさにはまっています。


葛西水族園に入ると、まずシュモクザメやエイ、アジやイワシが泳いでいる大きな水槽があります。
その水槽だけでも、魚の美しさに惹かれて1時間でも2時間でも過ごせそうなほど好きなのですが、ほとんどの人が素通りして、閑散としています。


次の大水槽は、もっと水槽内も水槽の前も閑散としていることが多いのですが、先日、その水槽にマンボウがいることを初めて知りました。


新しくマンボウの飼育を始めたのかと思ったのですが、検索してみると2014年2月20日にはすでにマンボウの展示を始めていたようです。
その水槽の前を何度も素通りしてしまったことに、ちょっとショック。


その日は、ちょうど給餌の時間だったのでマンボウの姿が見えたのでした。
YouTubeに「特製『マンボウ団子』を食べる!マンボウの給餌」として公開されています。
赤いボールのようなものが浮いていたので見ると、その横に「人の手」のようなものが浮かんでいて驚いたのでした。
水槽の外側から見ると、飼育員さんの手だけがふわりと水に浮いているように見えたのです。


そこにマンボウが突進して行く様子は、なんだかシュールな絵を見ているようでした。


<「泳ぎが下手」>


初めて実物のマンボウを見て、次回も楽しみにして行きました。


でも先日の餌を食べているマンボウとは別人(いや魚か)かと思うほど、動きが鈍いのです。
なんだか「溺れかかった」ような動きです。


東海大学海洋学部博物館の「海の博物館」に「マンボウの素顔」という記事でマンボウの特徴が書かれていました。

マンボウが多くの人によく知られている理由は、その魚離れした(?)形から受けるインパクトの強さにあるでしょう。そこで、まずはマンボウの形の特徴を詳しくみてみます。体は左右に平たく、横から見ると卵形です。ウロコはなく、硬くザラザラした分厚い皮膚でおおわれています。体の上下には、それぞれよく目立つ背びれと臀ビレが張り出しています。全長の割に大きすぎる気もしますが、これはマンボウには尾ビレがなく、推進力の全てをこれらのヒレだけでまかなっているためです。そのため、サイズが大きいことに加え、やや厚みのある硬い構造になっています。ふだんは背ビレと臀ビレを左右に降りながらゆっくりと泳いでいるマンボウですが、敵から逃げるときや餌を追いかける時には比較的早く泳ぐこともできます。また水面から数メートルもジャンプをすることがあり、「のんびり」という一般的なイメージとはかなり異なる一面も持っています。ところで、尾ビレがないと聞いて、疑問に思った方もいるかもしれません。よく見ると、マンボウにも体の後縁を縁取るようにヒレがついています。しかし、これは背ビレと臀ビレの一部が変形して出来たもので、尾びれではありません。舵ビレと呼ばれるこのヒレは、推進力を得られるようにはできておらず、名前のとおり泳ぐ方向を変える「舵とり」の役割を果たしています。ところが舵ビレは小さく、急な方向転換には向いていません。また、同じく舵とりの役割をもつ原ビレがないことや、体が硬くてほとんど曲がらないこともあって、小回りを聞かせた泳ぎは苦手なようです。


うーーん、観察に基づいていてわかりやすい説明ですね。すごい。


さて、私が立っているところにゆっくりと近づいて来たマンボウですが、時々体が臀ビレの方に沈みそうになっては、下側の背ビレを地面について「よいしょ」という感じでまた体勢を立て直すのです。
体の軸もぶれて、時々ふらりと傾きそうになったり。


しばらく同じ場所にいてマンボウが泳ぎ始めるのを待ったのですが、まるでハシビロコウのようにマンボウは動きません。
つぶらな瞳でじっとこちらを観察しているかのようです。


他の魚も見たいので、仕方なく水槽を離れたのですが、後ろを何度か振り返ってもマンボウは同じ場所で、お尻の方から沈みそうになっては体勢を立て直していました。



きっとマンボウにはマンボウなりの意味があって、水の中であのような動きをするのでしょうが、不思議な魚でした。


水中で抵抗なく早く泳げるようになるだけが、魚の進化ではないということでしょうか。




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