観察する 10 <マンボウ>

マンボウがどういう魚なのか、すぐにその姿を思い浮かべることができるほど、身近な魚になったのは日本ではまだそう遠くない話ではないかと思います。


マンボウでまず思い浮かぶのは、どくとるマンボウこと北杜夫氏です。
といっても、本が大好きだった私が北杜夫氏の本はほとんど読んだ記憶がありません。


子どもの頃から名前は知っていましたし、医療職になってからは精神科医として、そして躁鬱病患者としての北杜夫氏のインタビュー記事などは読んだ記憶があります。


そのあだなの「どくとるマンボウ」のマンボウが何を意味するのか気づかず、魚のマンボウと一致したのもここ十数年ぐらいのような気がするので、やはりマンボウは近年になって日常的に話題になった魚なのかもしれません。


北杜夫氏はなぜ、日本では知名度が低いマンボウをあだなにしたのだろう、どこでマンボウを知って魅かれたのだろうとちょっと気になります。
Wikipeidaの「医師、作家として」にはこんな説明があります。

1955年(昭和30年)12月には山梨県甲府市里吉町の県立玉諸病院(現在は韮崎氏旭町上條南割に移転した山梨県立北病院)に一年間勤務する。甲府時代の様子は『どくとるマンボウ医局記』や辻邦生との往復書簡によって知られる。
1958年11月から翌年4月にかけて、水産庁の漁業調査船照洋丸に船医として乗船し、インド洋から欧州にかけて航海した。ドイツ訪問が乗船の動機だった。この体験に基づく旅行的エッセイ『どくとるマンボウ航海記』が同年に刊行されると、従来の日本文学にない陽性でナンセンスなユーモアにより評判になり、ベストセラーとなる。


この航海のどこかでマンボウを見聞きして、名前につけることになったのでしょうか。
マンボウのどこに魅かれたのでしょうか。
久しぶりに図書館にでも行って、「どくとるマンボウ航海記」を読んでみたくなりました。


マンボウの名前の由来>


どくとるマンボウの名前の由来も気になりましたが、本家のマンボウの名前はどこから来たのか気になりますね。


フグ目マンボウ科」という分類になるそうですが、Wikipediaの説明には「マンボウ(翻車、Molamola)」「英語ではオーシャンサンフィッシュ(ocean sunfish)だが、ブルーギルなどを含むスズキ目のサンフィッシュ科とは関係がない」とあって、これだけでもう頭が混乱。
ただ、「マンボウ」は日本語名らしいことがわかりました。


「ダイブライト」というダイバー向けのサイトのマンボウ豆知識にわかりやすく書かれていました。

名前の由来:マンボウは「満方」「円魚」が由来という説。これは満、円とも円いのマンから来たというもの。いかにもマンボウの特徴をいい表している語源です。さらに「方」「魚」マンボウの「ほう」が訛ったものといわれています。また「万宝」という説もあります。これはお守り袋の万宝に見た目が似ているからという説です。


さらに、マンボウには地方名の多く「浮木」(マンボウが海面に浮かぶ修正が大木が浮かんでいるように見える光景から)、「尻切」(魚体の後半がきれたような形になっている)、「雪魚」(身がイカに似て白身で軟らかいことから)というものまで探せば探すだけ見つかります。


また、学名である「モラモラ(molamola)は、ラテン語によるまるい体つきから来ていて、「モラ」に関していえばひき臼に当たる言葉だそうです。やはりマンボウの特徴からきています。


へえー、なるほど。


もう少し探してみたら、「NIKKEI STYLE」というサイトの「三重の漁師町の珍味 マンボウ」という記事に「マメ知識」としてこんなことが書かれています。

マンボウはフグの仲間の海魚で、体長3メートルを超えるものもある。温帯域の産みに生息し、日本近海では吸収から東北まで分布する。身は白身で柔らかく、腸や肝(キモ)も食べられる。江副水城著「魚名源」によると、マンボウのマンは、ぐずでぼんやりしている意の「●(●は滿のつくりの右側に貢)」、のろいの「慢」双方の意味がある。


これはさすがにマンボウに同情したくなる由来ですね。
たしかにその泳いでいる姿は決して速くないし、なんだか「あ〜〜沈みそう」という感じではあるのですが。


名前ひとつとっても、気が遠くなるほど観察がされ続け、そして日本だけでなく世界中で似たような名前がつけられて分類されていくのはおもしろいと思いました。



あ、また小学生の見学日記のような内容になってしまいました。






「観察する」まとめはこちら