観察する 47 <動かない魚類>

水族園に通っているうちに、それまで見ているようで気づかなかったことが新たな興味になっていきます。
グルクマのふりをしたマアジとか。


最近、ワニやハシビロコウと同じく、動かない魚がとても気になっています。


ヒラメやカレイのように海底の砂に同化してじっと獲物を待ち、近づいて来たら「パクッ」という行動も「動かない」ことのひとつなのですが、餌を食べるという目的がありそうです。
ところが、いろいろな水槽を見て回るうちに、「何の目的があって動かないのだろう」と不思議な種類がいます。


最初に気になったのが、深海魚の水槽にいたタカアシガニとフトツノザメでした。
タカアシガニというとその長い脚でゆっくりと動いているイメージがありますが、甲羅を海底につけて腰を下ろしたかのようにジッと動き来ません。
まるでへたり込んでいるかのようです。


その隣りでは、壁にもたれかかるかのようにフトツノザメが半ばお腹を見せるかのような姿勢で横たわっています。
しばらく見ていましたが、ピクリとも動きません。
もしかしたら調子が悪いのではないかとスタッフに声をかけようかと戸惑ったほど、ダランとしていました。でも体調管理の専門家が見逃すはずはないだろうと思い直したのでした。


それ以来、水槽をまわる時には「動かない魚」に目がいくようになりました。



最近見つけたのが、オーストラリアの海に生息するナーサリーフィッシュです。その姿や繁殖方法も興味深いものですが、展示されている様子を見ていると、周囲の他の魚が泳いでいても同じ位置でじっとしているのです。


もうひとつはツボダイで、深海魚の薄暗い水槽でピクリともせずに同じ場所に浮かんでいる姿は、幻想的なくらいです。


水の中でも他の魚が泳げば水自体が揺れるので、同じ姿勢のまま漂っているのならまだわかるのですが、おおげさでもなく1mmもその場を動かないし、背びれなどを動かしてバランスをとっているわけでもないのです。


完璧な美しいストリームラインを保持しつつ、さらに移動もしないという矛盾した動きは何のためなのでしょうか。


そしてその姿勢を維持するための筋肉はどのようなしくみになっているのでしょうか。


泳ぎ続けなければ死んでしまうと言われている魚もいれば、ジッと動かない魚もいる。
本当に興味が尽きない水の中ですね。




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