今年もまた、プールではニモたちの季節がやってきました。
小学生だった頃、夏の短期間しか泳げない地域なのにクロールで速く泳ぐ友人がいました。
今のようなスイミングスクールがない時代だったので、どうやって彼女はあんなに上手に泳げるようになったかわからないのですが、今でも記憶にある彼女の泳ぎ方は「体がまっすぐだった」というイメージです。
それがストリームラインにつながったのは、20年以上もたってからでした。
ニモたちの水泳教室を見ていると、バタ足から教えているような印象です。
ニモたちだけでなく、大人の水泳教室でもバタ足が基本のようです。
プールサイドにつかまってバタ足の練習をし、ビート板でバタ足を練習し、そして泳ぎ始めるとバタ足で推進力をつけるといった感じ。
その方法で上達していく人もいれば、バシャバシャと溺れないように必死に水を蹴って疲労困憊しているような人もいます。後者の場合は、きっと水が嫌いになって長続きしないだろうなと勝手に推測しています。
子どもたちにストリームラインを教えている教室は、今までほとんど見たことがありません。
何故なのだろうと不思議でした。
<惚れ惚れするストリームライン>
こちらの記事でも紹介した野口智博氏の「速く美しく泳ぐ!4泳法の教科書」では、ストリームラインについてこう説明されています。
ストリームラインとはけのびでの姿勢のことで、泳ぎの際に人間の複雑な身体の形をどのようにして一直線に、かつ細長くするかが求められます。この姿勢に腕や脚の動作がつくことになるので、泳ぎの基本姿勢と言っても過言ではなく、ストリームラインで水の抵抗が少ない人ほど、より高い推進力を発揮することができるといわれます。
先月の競泳ワールドカップ2016でも、カテインカ・ホッスー選手以外にも、そのストリームラインに惚れ惚れとする何人かの選手が印象に残りました。
このワールドカップは短水路(25m)なので、通常の競泳大会とは違って、観客席の方に向かってスタートしたりターンをする様子がみられます。
「美しい!」と感動したのは、スクーマン選手でした。スタートで飛び込んでから15mギリギリまで、キックもせずにけのびの姿勢だけでスーッと前に進んでしました。
そしてターンで壁を蹴るとそのまままたスーッと10m以上はけのびの姿勢だけで進み、他の選手をすっと追い越して行くのです。
クロールだけでなく、平泳ぎ、バタフライともに見事なストリームラインでした。
<達人にとっての基本>
ではニモたちに繰り返し繰り返しストリームラインを教えたら、泳ぎが速くなるか。
筋力トレーニングをして体幹を鍛えたら、ニモたちもストリームラインを保てるようになるのか。
ストリームラインというのはたしかに「基本」ではあるのですが、やはり初心者には難しいのではないかと自分の経験を振り返っても思います。
その難しさは、ひと言で言えば「さまざまな状況を客観的に観察して判断する能力」なのかもしれません。
自分の体がどのように曲がってしまっているかとか、水の抵抗をどう受けているのかとか。
このあたりは、やはり人間としての成長とともに時間をかけて、練習の中で経験として得ていくものなのだろうと。
そして泳ぎに無駄がなくなる達人の域に達して初めて、「基本」になるのかもしれません。