乳児用ミルクのあれこれ 37 <なぜ「男性の暮らし方」になるのだろう?>

液状乳児用ミルクが実現しそうというニュースは何か気になるなあと書いたのですが、さらに気になるニュースがありました。

液体ミルク、製品化に数年=政府調査会で乳業協会


政府は14日、「男性の暮らし方・意識の改革に関する専門調査会」の第2回会合を内閣府で開き、国内で製造、販売されていない乳児用液体ミルクの普及に向け、関係団体などから意見を聴取した。


この中で日本乳業協会は、製品化までに少なくとも数年かかるとの見通しを示した。


液体ミルクは常温で保存でき、封を開けて吸い口を装着すればすぐに飲めるのが特徴。同協会は「品質保持、色調の変化など安全性や利便性についてクリアしなくてはならない課題が多くある」と指摘した。
時事通信 2016年11月14日(月)配信


何故、液状乳児用ミルクが「男性の暮らし方・意識の改革に関する専門調査会」の議題になるのでしょうか?


少しニュースをさかのぼってみると、2016年10月22日の時事ドットコムニュースにこんな記事がありました。

液体ミルク普及へ制度整備=政府、育児負担軽減に期待


政府は、乳児用液体ミルクの国内製造、販売に向けた制度整備に乗り出す。安全基準を設定するため、業界団体にデータ提供を促し、早ければ来年度からの流通を目指す。安倍政権が掲げる「1億総活躍社会実現」の一環で、育児負担を軽減する狙いがある。


液体ミルクは常温で保温でき、封を開けて吸い口を装着刷ればすぐに飲めるが特徴だ。東日本大震災の際、海外から緊急支援物資として届けられたのを機に、個人で輸入する人が出始めた。湯に溶かす粉ミルクと比べて簡便なため、男性の育児参加を促進する効果が期待されている


国内で製造、販売されていないのは、食品衛生法に基づく安全基準がないからだ。常温保存の液体ミルクは、細菌が発生しやすいなどの問題点も少なくない。基準設定には厚生労働省令の改正が必要で、塩崎恭火厚労相は18日の記者会見で、業界団体から試験データーの提供があれば速やかに専門的な検討に入る考えを明らかにした。


製品に「乳児用」と表示するには、健康増進法上の「特別用途食品」として首相の許可も必要になる。松本純消費者行政担当相は18日の会見で「厚労省等での議論を注視しつつ、早急に対応できるよう準備を進めたい」と語った。


「湯に溶かす粉ミルクと比べて簡便なため、男性の育児参加を促進する効果が期待されている」


あ〜あ。今まで乳児用ミルクの歴史を考えて来たけれど、なんだかあさっての方からボデイブローを受けた気分。


液状ミルクのメリットは滅菌されていることであって、「細菌が発生しやすい」はミスリードだと思います。


そして、あくまでも乳児の健康という視点から、WHOと国連食糧農業機関(FAO)の「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存および取り扱いに関するガイドライン」の以下の部分がようやく実現されるということなのです。

可能な限りリスクの最も高い乳児には商業的に殺菌されたすぐに使える液状乳児用ミルクが推奨される。
滅菌した液状乳児用ミルクには病原菌が存在せず、感染のリスクもない。

滅菌の技術を持つ「先進国」なのに、未だに実現されていないこの国は何を見失っているのだろう。
災害時に最も乳児に必要な、清潔で安全な食糧なのに。
暗澹たる気持ちになりました。




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