事実とは何か 63 「小児科医」?

うさぎ林檎さんtweet、「なんで『小児科医』がそんなことを」(6月21日)が目に止まりました。

 

NHKの液体ミルクの報道は、私もちょうどニュースで見ました。

「発売から3ヶ月、液体ミルクは親の負担軽減だけでなく、思わぬ広がりを見せています」(NHKおはよう日本」、2019年6月13日より)

私が見た番組では「小児科医のFAX」はなかったので、どんな内容か気になって検索したら、以下の内容のようです。

2才の乳幼児を子育て中の小児科医です。液体ミルクが 登場し、人工乳が必要な保護者にとって選択肢が増えるのはよいことだと思います。しかしながら粉であろうと、本来は母乳代用品であり必要なお子さんのみが使用するものであるはずです。母乳で育てているお母さんが、便利だからという理由で、本来は不必要なのにミルクを使うことで授乳回数が減ってしまい、母乳がその分だけ足りなくなってしまうこと、乳管が詰まって乳腺炎を起こすことも、同時に知っておいて欲しいと思います。そのため国際基準では、ミルクを一般の方に宣伝することは規制されており、必要な人にのみ情報やミルクを提供することとなっています。人工乳が必要な保護者にとっての選択肢が増えること、と同時にそのような影響も合わせて報道することで、母乳育児中の母を不必要に悲しませないでいただけると幸いです。

 

冒頭の「2才の乳幼児を子育て中」という表現がひっかかりました。

小児科の先生なら、乳児と幼児の定義も曖昧なまま我が子を表現するはずはないと思いますからね。

 

本当に小児科の医師だとしたら、もしかしたらこのあたりの母乳推進運動にかなり強く影響を受けた方かもしれません。

「母乳育児と母乳代替品育児」とか「富士登山は完全母乳育児」といった表現に疑問を持たないほどの。

 

そういう理想を持っても、実際に臨床では母乳だけでは体重増加不良が著しい赤ちゃんに遭遇するのは珍しいことではなくなることでしょう。

FAXでは、「必要なお子さんのみ」「本来は不必要な」「必要な人のみ」いった表現が多いのですが、不必要なミルクかどうかなんて誰も判断できない、医療の不確実性、医療の一回性に葛藤するのが臨床の現場ではないかと思います。

 

そして小児科医として母乳とミルクについて書くとすれば、液体ミルクが乳幼児の授乳にどのように影響があるかになると思うのですが、「母乳育児中の母を不必要に悲しませないでいただけると幸いです」になってしまっているのは全くの個人の話であって、小児科医療の話でもなさそうです。

 

FAXやネットで自分の考えや気持ちを自由に表現できる時代になって、いろいろな思いを知る機会にはなったのですが、「小児科医」と書いてあるから番組で紹介したとしたら、NHK側のパターナリズムも問われているかもしれませんね。

 

 

「不必要なミルクを足す」ことと乳腺炎の発症についても、なんだかつじつまの合わない話だといういう印象です。

ということで、もう少し続きます。

 

 

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