発達する 5 <年をとるということ>

父の面会に行く時にバスを利用するのですが、始発であることと、いつも数人しか乗らないので絶対に座れます。
ところが、並んでいる人を押しのけて横から乗り込む高齢の方がいるので、ちょっとびっくりします。


また最近のバスは、「危険なので、バスが停車するまでは座席から離れないでください」とアナウンスをしているのですが、降りるバス停が近づくとそわそわと立ち上がって、転倒しそうになる高齢の方を必ずといって見かけます。


「間に合わないといけないから」と気持ちが焦るのも、高齢者の行動の特徴の一つのように見えますし、あるいは身体能力と判断能力と、本人の認識とはもしかしたらだいぶズレがあるのかもしれません。
周囲の人をヒヤヒヤさせ、年寄りっぽい行動に見えてしまう理由には何があるのでしょうか。


「いつか行く道」ですし、できればそういう行動をとらないようにしたいと思うのですが、現在の高齢者の方々も50代の頃にはこういう場面を見ては「自分はそうなりたくない」と思っていたのかもしれませんね。
でも気づいたら同じような行動になっていくのかもしれません。


<「いつまでも仕事をしたい」>


高齢者の定義が75歳以上に変わる可能性についてのニュースに対して、その「当事者」の声が記事になっていました。


いくつになっても働きたい 「期待は甘い」の声も
2017年1月6日(金)共同通信社


「高齢者」が75歳からになると、どうなるのかー。日本老年学会などの5日の提言に対し、現状で高齢とされている世代からは「いくつになっても働ける社会にしてほしい」と好意的に受け止める声が相次いだ。一方で、識者からは年金や医療費削減を懸念し「定年延長への期待は甘い」との意見も出た。


タレントで俳優の毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)さん(80)は「昔の70代はおじいさんやおばあさんに見えたが、今はまだまだ若い。提言はその通りだと実感する。健康寿命を上げて、元気でチャーミングなお年寄りがもっと増えればいい」と前向きに評価する。定年延長の動きにもつながることを望んでいる。


毒蝮さんは「若者の道が開けないとの見方もあるが、能力のある年寄りから教わることは多い。定年が早いと認知症にも影響がある。社会保障費が抑制されれば、国にとってもありがたいはずだ」と話した。


東京都北区で従業員5人の印刷所を営む中村輝雄(なかむら・てるお)社長(73)も、高齢者が活躍する機会が増えることを期待する。従業員の最高齢はアルバイトとして働く80歳の男性。中村さんは「重い物は持てないが、出来る範囲で、いつまでも仕事をしてもらいたい」と願った。


東京・新橋で友人と待ち合わせをしていた千葉県鎌ケ谷市の無職男性(72)は、64歳で会社を定年退職。「仕事はやり切った」というが、「意欲のある人が働けるのは良いことだ。体を動かす仕事は若者には叶わないが、経理などの専門分野の知識がある人は、何歳になっても能力を生かせると思う」と強調した。


一方、「悪影響が非常に心配」との見方をしたのは、ジャーナリスト田原総一郎(たはら・そういちろう)さん(82)。「定年延長への期待は甘いと思う。長く働けるようになっても、企業は新しい契約を結び、給与を抑えようとするだろう。提言は一見、正しいように見えるが、年金の支給が先延ばしになったり、医療費が抑制されたりする可能性もある」と指摘した。


たしかに年齢だけでは判断できない、能力や体力の個人差があります。
私が助産師になった頃、一緒に働いていた 60代から80代の先輩助産師を思い出してもそうですし、医療現場では80歳前後でも現役医師として活躍されていらっしゃる方々もいます。


「元気でチャーミングなお年寄り」が増えてもいいけれど、仕事というのはまた別の視点が必要ではないかと、この記事を何度も読み返しています。


この記事に感じる違和感、それはきっと「自分はいつまでも働ける」と思いたい気持ちが前面に出ていることかもしれません。
生物としての限界を、あえて見ないようにしているような。
それはかえって「子どもっぽい年寄りっぽさ」に私には映るのですが。




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