発達する 18 <嗅覚の加齢に伴う変化>

いまだに新生児でさえ「日常生活行動」が十分に観察されたり表現されていないように、人間の年齢に伴う変化は複雑すぎて、自分の体をどう取り扱うかという「トリセツ(取り扱い説明書)」もないのが現状なのだろうと思います。


たとえば女性の更年期についても、虚像の不安を煽るような表現が多いのですが、私自身はむしろ精神的に解放感がありました。
ただ、急に筋肉量が減ったような感じになったり、歯科通院が増えたのですが、こういう状況はもう少し後、60代とか70代ぐらいの悩みかと思っていました。


50代の女性、個人差はあると思いますが、まだまだその心身の変化は多様で表現もされにくいのだろうと思います。


<嗅覚の変化、むしろ敏感になる>


加齢に伴う変化というと「衰える」ことばかり、という印象があります。
たしかにリーディンググラスが必要になりますし、次第に耳が遠くなったり、歩くのにも杖が必要になったりすることでしょう。


ところが、「たばこの臭いと感情」にも書いたように、嗅覚は鋭敏になってきたような気がしています。あくまでも私個人の話ですが。
ですから、以前は大好きで食べていたにんにくのにおいが苦手になったり、自分が苦手と感じる臭いの種類が増えてきました。


嗅覚の加齢に伴う変化はどこまでわかっているのだろうと検索してみたら、独協医科大学の「Dokkyo Journal of Medikal Sciences」の「加齢による変化」という論文が公開されていました。10年ほど前の内容ですが、「嗅覚障害」に以下のように書かれていました。

 加齢による変化は、嗅上皮の面積や嗅細胞数が減少していき、その結果、嗅覚閾値は上昇する。梅田らは、アリナミン液を用いた嗅覚検査で70歳以上では有意に嗅覚閾値が上昇することを報告し、60歳代ではその移行期であると述べている。また、Dotyは嗅覚識別能力の測定結果から70歳以降で著名な低下を認め、65〜80歳までの対象の半数以上が嗅覚障害を有し、80歳以上では4分の3が嗅覚低下を有していると報告している。

 高齢化社会を迎え、一人暮らしの老人が増加している中で、加齢による嗅覚障害は、前述した危険な臭いの察知、回避困難や香り、食べ物の楽しみが薄れていくという諸問題が生じる。

「前述した危険な臭い」というのは、「食品の腐敗、ガス漏れ、物が燃えた臭いなど」を指しています。


加齢によって嗅覚も衰えるというのは、当然と言えば当然かもしれません。


でも、私の50代ぐらいから急にさまざまな臭いが気になり出したのは何故なのでしょうか。
考えられるとすれば、「その臭いが嫌だ、不快だ」という経験が積み重ねられて、自分の中では拒絶するべき臭いとして認知されているという精神的なものとでもいうのでしょうか。


私にとって「危険な臭い」には、今のところ「他の人を不快にさせる」という認識も含まれているのですが、それさえも気にならなくなってしまうのが老いなのかもしれないと思っています。
もしかすると、今嗅覚に鋭敏になっているのは、そういう変化をどこかで意識しているからかもしれません。


加齢に伴う嗅覚の変化も、まだまだ表現されていない個人の体験がたくさんあることでしょう。




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