10年ひとむかし 22 <マタニティマークとヘルプマーク>

乳児用ミルクについてはもう少し続くのですが、今日は少し話題を変えてみようと思います。


20年ぐらい前のこと、つわりで入院されていた妊娠初期の方と話をしていた時に、「通勤がこわいですね。まだ初期だと妊婦だってわかりにくいから」とおっしゃるので、「『私は妊娠中です』とわかるようなバッチがあるといいかもしれないですね」と冗談めいて話をしたことがあります。


その後、マタニティマークが本当に登場して驚きました。
先日、マタニティマークができて10年たったというニュースを聞き、10年ぐらいたつと人の意識もだいぶ変化するのだと感じました。


マタニティマークの当初の目的が、厚生労働省の「マタニティマークについて」に書かれています。

妊娠初期は、赤ちゃんの成長はもちろん、お母さんの健康を維持するためにとても大切な時期です。しかし外見からは見分けがつかないため、「電車で席に座れない」、たばこの煙が気になる」など妊婦さんにはさまざまな苦労があります。


「外見からわからない」状況を想像するのはほとんど無理ですから、こうした注意喚起になるような目印が必要とされるのだと思います。


あるいは当初の目的の「妊娠初期」だけでなく、「外見上は妊婦さんのようだけれど、本当に妊婦さんなのか、それともふくよかな体型なのか」と席を譲かどうか、席を譲る側も葛藤しなくてすむようになったことも良かったことのひとつかもしれません。


妊娠中の方は立っているのはつらいので、席を譲る。
当たり前のようでなかなか難しかったことが、このマタニティマークの広がりとともに社会に根づいてきたことは本当によかったと思います。


ただ、20年前に夢のように語っていたことがいざ実現すると、それはそれで問題もいろいろとあるようです。
たぶん、その多くが気持ちの問題なのではないかと思いますが、だからこそ解決しにくいわだかまりもあるのではないかと感じています。


そんなことが気になっていた頃、「赤字に白十字とハート」マークをつけた方を見かけるようになりました。


いつから広がったのだろうと検索してみたら、なんと全国的なものではなくヘルプマークとして東京都が2012年(平成24年)から始めたものだったのですね。


対象者として、「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方」となっています。


年齢や外見の健康さに関係なく、配慮があったほうがよい状況というのは、ご本人も伝えづらいですし、周囲も想像できるものではないですから、双方が助かるのではないかと思います。
また、自分の病気や障害、あるいは妊娠しているといった非常にプライベートなことを知らせなくても、「詳細はわからないけれど配慮が必要な方」と認識できるので、「気持ちの問題」にも少し解決の道筋ができるのではないでしょうか。


「ヘルプマークを身につけた方を見かけたら」には、こんなお願いが書かれています。

電車・バスの中で席をお譲りください。
外見では健康に見えても、疲れやすかったり、つり革につかまり続けるなどの同じ姿勢を保つことが困難な方がいます。また、外見からはわからないため、優先席に座っていると不審な目で見られ、ストレスを受けることがあります。

駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮をお願いします。
交通機関の事故等、突発的な出来事に対して臨機応変に対応することが困難な方や、立ち上がる、歩く、階段の昇降などの動作が困難な方がいます。

災害時は、安全に非難するための支援をお願いします。
視覚障害者や聴覚障害者等の状況が難しい方、肢体不自由者等の自力での迅速な避難が困難な方がいます。

これを読んで、20年前には考えられないほど社会が変化したことを感じました。
でも、まだ今年3月現在でこのヘルプマークを導入しているのは、東京以外は京都府和歌山県徳島県青森県奈良県・神奈川県だけだそうです。


マタニティマークの進化形として、ヘルプマークとして全国に広がっていくと良いのですけれど。




「10年ひとむかし」まとめはこちら