正しさより正確性を 14 <周産期の福祉の歴史のようなもの>

妊婦加算の話題で真っ先に思い出したのが、現在、当たり前のように使われている妊婦健診の無料補助券が14回分になって、ほぼ全妊婦健診が基本無料になったのが2009年だったことでした。


では、それまではどうだったかというと、案外、こういうここ20〜30年の制度の変遷はまだ年表になっていなくて、あれこれと資料を引っ張り出しながら自分で整理していくしかないのですね。


検索したら、厚生労働省の「妊婦健康診査の現状について」(2009年、平成21年)という資料が公開されていました。
無料券が14回分とされた根拠が書かれています。

※受診することが望ましい健診回数(平成8年11月20日付児発第934号局長通知)
 1. 妊娠初期より妊娠23週(第6月末)まで:4週間に1回
 2. 妊娠24週(第7月)より妊娠35周(第9月末)まで:2週間に
                          1回 
 3. 妊娠36週(第10月)以降分娩まで:1週間に1回
(これに沿って受診した場合、受診回数は14回程度と考えられる)


私が助産師になった1980年代終わり頃の都内では、妊婦健診の補助は、前期・中期・後期の3回のみだったと記憶しています。
また、検索してみても正確な年がわからないのですが、経腹エコーが一般化された1990年代半ばごろに、35歳以上の高齢妊婦の方にはエコーの無料券の補助が始まりました。


そのあたりの変化については地域差があるのですが、上記の厚労省の資料では「健診費用の公費負担の経緯」で以下のように書かれています。

1. 昭和44年〜 都道府県が委託した医療機関において、低所得世帯の妊婦を対象に、公費(国1/3、県2/3)による健康診査(妊娠前期及び後期各1回)を開始。
2. 昭和49年〜 すべての妊婦について、妊娠前期及び後期各1回都道府県が委託した医療機関に置いて健康診査を実施。(国庫負担率1/3、県2/3)
3. 平成9年度〜 実施主体が都道府県から市町村へ。
4. 平成10年度〜 妊婦健康診査費用(2回)を一般財源化(地方交付税措置)。
5. 平成19年度〜 地方交付税措置による公費負担回数の充実(2回→5回)。

公費負担の現状
公費負担回数の全国平均5.5回(平成20年4月)[平成19年8月時点 2.8回]
・妊婦健診の受診勧奨に向けた組織の推進や経済的負担を軽減するための更なる公費負担の充実が図られるよう、自治体に促しているところ。

そうでした。10年前はまだ数回分の補助しかなくて、それでも3回の時期に比べれば充実してきたと感じたものでした。
健診回数は今とほとんど同じですから、健診の半分は自費で3000円前後を支払っていたのではないかと記憶しています。


それが14回の補助券になってちょうど10年になるのですね。
当時は夢のような制度になったと、安堵したものでした。
「お金がなくて健診を受けなかった」という人をなくせるのですから。
こうして、少しずつでも確実に周産期の福祉制度が充実してきた歴史を、そろそろ年表にして母子手帳にでもつけてみるとよいのではないかと思いました。


自分が何を社会から受益しているのか、当たり前の感覚に陥ってしまいやすいものですね。


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