先日、報道ステーションの中で古賀淳也選手の浮き上がりのコツの特集がありました。
リオオリンピックでは専門だった背泳ぎでは選考からはずれ、自由形リレーメンバーでオリンピック初出場となりましたが、昨年12月に行われた世界短水路選手権では専門の背泳ぎの50mで優勝したのでした。
「浮き上がりの時の腕の高さだけでぐっと推進力が増す」ことが、古賀選手の技術だと思っていましたが、あの水しぶきのすごさで見えなかった細部には、もっと違う技術があったことをこの番組で知ることができました。
通常、背泳ぎのスタートでは真っすぐに伸ばした腕を入水させたら、体幹の横あたりで肘関節を少し屈曲させながら、ぐっと水をかいて推進力にしていくのではないかと思います。
ところが、古賀選手の新しいスタート技術は、腕を胸部へ向けて振り下ろすように最初のひと掻きをしていました。
水中でその様子を見ていた、同じく背泳ぎの選手だった寺川綾氏が「発想になかった」と驚く方法だったようです。
たぶん、I字プルだった人がS字に変えたからといって速くなるわけではないように、理論的にはその入水方法が速くなる可能性があっても、なかなかすぐに出来るわけではないのだろうと思います。
古賀選手も、その番組の中で「実戦で使ったのは僕が初めて」と語っていたほど、難易度の高いものなのかもしれません。
トップスイマーとはレベルが違うのですが、実は私自身も似たような入水方法になっています。
ただ、手を掻く方向が胸の方に向かって振り下ろすのではなく、従来のような入水方法ではあるのですが、腕が体幹にぴったりと付きながら胸部付近をかするようにフィニッシュしていく感じです。
言葉で表現するのは難しいのですけれど。
なぜ、こんな我流の入水になったのかというと、最も水の抵抗が少ない方向を模索していたらこうなったという感じです。
でも今回の古賀選手の映像を見て、あながち私の感覚も間違いではなかったのかもしれないと、ちょっとうれしくなりました。
さて、こういう優れた泳ぎのできる選手の技術をテレビで伝えるのは、競泳の放送もまた「発想を変える」時代になったのかもしれませんね。
メダルのことばかりだったり感動話で盛り上げる構成ではなく、選手への敬意が感じられるものでした。
そしてまた、勝負だけにこだわる時期を越え、泳ぐための技術を求め続ける達人級のスイマーが増えたからこそ、次の世代へバトンを渡すために手の内をあえて見せることができるようになった。
そのような印象を受けました。
13日から、競泳選手権が始まります。
今年度は名古屋での開催なので残念ながらテレビ録画での観戦ですが、お近くの方は是非!
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