正しさよりも正確性を 4 <正しさだけではつじつまがあわなくなる>

私がkikulogというサイトを知ったのは、助産師の中に広がるホメオパシーって何だろうと検索していた時でした。
2009年の初めの頃だったと思います。


その中で、ご家族がホメオパシーにのめり込んでしまった方が、ホメオパシーの研修会を開いていた日本助産師会宛てに2009年5月に問い合わせをした記録が、「助産院とホメオパシーなど」に残されています。


当時の日本助産師会の見解が以下のように記されています。

1. ホメオパシーに関する見解

 ホメオパシーは今から200年前にドイツの医師ハーマネンが確立した療法で、その紀元は古代ギリシャヒポクラテスまで遡るといいます。代替医療の一つである。イギリスでは療法そのものが、国民医療保険の対象になっており、英国王室の主治医は150年間、ホメオパシーの医師が勤めていると言われている。


 我が国の開業助産師の中には、ホメオパシー療法の認定の施術者として、日本ホメオパシー医学協会にて認定された助産師がホメオパシー施術を実施しているとされている。認定を受けた者が対象者の同意を得て実施することは、問題がないと考える


 現在、わが国における開業助産師の業務は、保健師助産師看護師および医療法に基づき、更に本会の「助産所業務ガイドライン」にのっとって実施している。ホメオパシー施術もその業務の範疇は正常経過を辿る妊産婦であることは言うまでもない


2. ホメオパシーを実施する助産所が児の予防接種を勧めないかどうかについて、数カ所の助産所に電話で確認したが、その事実はなかった。


 今後、助産所において、そのような指導がなされていることが判明すれば、本会としては直接指導することや、中止するよう働きかける必要があると考えている。

私自身が助産師なのに、この助産師の世界に感じる違和感は何だろうと考えているうちに、あの事件がニュースになったのでした。


<K2シロップの「代わり」にレメディーを新生児に飲ませる>


その件に対して、日本助産師会が2010年7月9日付けで「ビタミンK2投与がなされず、児が死亡した件に関して」として以下のような見解を出しました。

 平成22年7月9日付、読売新聞(朝刊)に掲載された。これは、昨年8月3日に本会会員の開業助産師が関わり、自宅分娩し、母乳のみで育て、ビタミンK2を投与せず、自然療法のビタミンK2代わりの錠剤を投与した児が10月16日に山口県宇部市の病院で、ビタミンK欠乏症と診断され、呼吸不全で死亡した。母親は、助産師を相手に、損害賠償訴訟を山口地裁に起こしたことが報道された。
 このような事態が発生したことは、誠に遺憾であり、亡くなられた子どもさんとそのご家族の皆さまには、心から哀悼の意を評しますとともに、二度とこういうことが起きないよう本会としても強く会員に注意の喚起を促していきたいと考えている。
今回の自然療法を含む東洋医学代替療法に関する本会の見解を述べる。

東洋医学代替医療等に関する日本助産師会の見解


 助産師は、「保健師助産師看護師法」に基づき、正常妊産婦及び新生児に対する診査やケアを提供することを業務としている。具体的な助産師の役割や責務に関しては「助産師の声明」や「コアコンペテンシー」に規定し、公表している。
 助産師は、女性や新生児が本来持っている力を最大限に発揮できるよう支援している。それゆえ、生理的な自然の力を重視し、業務を行っている。
助産師は、活動の対象としている人々に対して、人間存在を全体的にとらえるべきであると考えている。すなわち、西洋医学を中心とした上で、食事療法、東洋医学代替療法も包含する統合医療の観点から理解しケアを展開している。
 分娩を取り扱う開業助産師の業務基準に関しては、「助産所業務ガイドライン」を定め、それに基づき、母子の安全性を最優先した業務を実施している。
したがって、助産学に付随する医学の考え方の基盤は、いうまでもなく西洋医学であり、あくまでも西洋医学的見解を主に、助産学が展開されていることは既存の事実である。それゆえ、助産師業務にまつわる妊産褥婦や新生児のさまざまなケアに関する考え方も同様である。
 それゆえ、ビタミンK2の投与や予防接種は、インフォームド・コンセントのもと推奨されるべきである。

ホメオパシーの問題に関する見解のはずが「自然療法や東洋医学」の話にすり替わり、壮大な「正常な分娩を取り扱う助産師の業務」の話になってしまっているのは、こんな思想の正しさにこだわっている人たちが考えたからなのでしょう。


ホメオパシーについて正確に情報を集めれば、この件での再発防止策は「ホメオパシーを使わない」ことと、「新生児メレナとビタミンK2シロップの必要性の啓蒙を徹底する」の2点だと思うのですが、そのあたりは何も書かれていません。


そして、ぽろりと「ビタミンK2の投与や予防接種は」と「予防接種を否定している動きがある」ことまで言及してしまっているのも、「正常なお産がある」という思い込みに端を発した思想のつじつまの合わなさがこんなところにも出てくるのかもしれません。


読み返してみると、「正しさ」は人の目を曇らせるのだなあと改めて思いました。


それにしても「助産学に付随する医学」って変ですよね?
助産学が付随する医学」の誤植でしょうか?


もう少し続きます。




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