助産師の歴史  7   真の理解がなければ真の反省は難しい

「平成助産師会革命」の「3つの負の出来事」の2つ目に「ホメオパシーによるビタミンK不投与の問題」が挙げられていました。

 

歴史として残したことは一歩進展かもしれませんが、なんだか「ホメオパシー」だけ「ビタミンK2シロップ投与」だけの、あるいは「個人の助産師」だけの問題になっている書き方が気になりました。

今後の参考のために、引用しておきます。

 平成21(2009)年10月、ホメオパシーによるビタミンK不投与により、児にくも膜下出血が発生し、それが原因と考えられる死亡事件が発生した。ホメオパシー療法でレメディ(糖成分)の投与により、ビタミンKは必要ないという考え方で開業助産師がレメディを勧め、ビタミンK2の投与がなされなかったことがあった。この事例は平成22(2010)年5月に訴訟になり、5600万円の請求がなされたものの、同年12月に請求金額等の詳細は公表しないことが条件であったため和解金額はわからないが、その支払いは助産所責任保険で支払われたことになる。

 この事故は本会のみならず医療界でも大きな問題になり、日本学術団体や医師会をはじめ専門団体が見解を公表した。本会も加藤尚美会長がいちはやく対応し、平成22(2010)年8月26日に報道関係者に資料1のような意見を公表し、9月7日には資料2のような見解と調査結果を公表し周知徹底した。同日、厚生労働省から本会あてに資料3のような指導書が届いた。さらに9月13日には、全開業助産師に資料4、地区理事・県支部長あてに資料5のような通達を送付した。また、9月27日にホメオパシー問題に関する緊急研修会を東京で開催した。この問題を契機に、助産師の業務に関係深い代替補完療法との関わり方を慎重にするようになった

 これらを踏まえ、『助産業務ガイドライン2014』には、医療安全上重要な12事項の1つとして1条項に加えられた。この教訓を忘れてはならない。

(強調は引用者による)

 

2000年代に入って一部の助産師や助産所で取り入れられていたホメオパシーについて助産師会側は肯定的でしたし、助産雑誌や研修会で広げた責任を問われ始めていました。

あの事故をきっかけに、一部の助産師が荒唐無稽で科学や医学を後戻りさせる考え方を社会に広げた影響を理解していないことにとうとう反省を促されたのだと思いますが、それでもなお、「療法」「糖成分」と書いているのですからやはり真に理解できていないのでしょうか。

 

それから数年後に出された「助産業務ガイドライン2014」ではこれだけしか書かれていませんでした。

医療事故は、単純あるいは基本的な確認ミス等、初歩的なケアレスミスであることが多い。それゆえ、一人ひとりの対象に基本的な事項から気を抜かずに関わることが大切である。

 

さらに数年たったので、助産師会内部での代替療法についてのリスクマネージメントがもう少し進んでいるかと思ったのですが、「教訓を忘れてはならない」だけのようです。

 

助産師という資格が広告塔にされ、バイブル商法に加担させられたことにも気づかず対応が後手後手になっていることに気づけていたら、真の革命的な出来事になっていたことでしょう。

こういうあやしい話に引っかかる人を引き止めることに、助産師の失敗談が役にたったかもしれないのに、残念ですね。

 

 

創立90周年記念誌のホメオパシー問題にも書きましたが、この「一貫していない」「言い方を変える」あたりが問題の根源ではないかと思われるのですが、それがどこからくるのか。

そして助産師として働いてきた私とは違う、「助産師の世界」があるのはなぜなのでしょうか。

 

 

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