散歩をする 19 <駿河湾へ>

春の日差しに誘われてむしょうに海を見に行きたくなり、半日から日帰りで都内から行ける海を探して、地図をつらつらと眺めました。



その中で、子どもの頃に海水浴で行った記憶がある海のひとつ、駿河湾もいいなと思いつきました。
思い立ったら吉日、ということでさっそく沼津へ。
今日は「散歩」というよりも、小旅行ですね。


駿河湾といえば、私が子どもだった1960年代から70年代の田子ノ浦港ヘドロ公害をまず思い出すほど、当時は悲惨な海だった記憶があります。海だけでなく、新幹線や東名高速富士市を通過する時にはスモッグで煙っていました。


海水浴に連れて行ってもらった頃は、公害が最もひどかった頃ではないかと思うのですが、伊豆に近い方の海にはたくさん海水浴場があったように記憶しています。


だんだんと公害対策が進み、駿河湾や沼津港が駿河湾の深海でとれる魚介類で有名になり始めました。
テレビなどで、よみがえった駿河湾を見る機会が増えて、公害のつけを何世代にも渡って残さずに済んで良かったと、いつもまずその思いがありました。
今も沿岸には工場が見えますが、当時が嘘のように美しい海が目の前に広がっていました。


たしか、沼津港深海水族館があったはずなので、立ち寄ってみました。
パンフレットにはこんな説明が書かれています。

駿河湾と深海生物


「富士山」とともに、そのスケールにおいて決して引けをとらない静岡県の「日本一」。
それは最深部2,500m、豊富な海洋資源を持つ日本一深い湾「駿河湾」です。
この湾の深海には、光が届かない闇と低水温、想像を絶する水圧という生き物にとって過酷な環境があります。
その中で生き続ける深海生物たちの多くは、今もなお機密のベールに包まれています。
日本初となる深海生物にスポットを当てたこの水族館では、深海生物の宝庫である駿河湾の生き物や、世界中のさまざまな環境に暮らす生き物、今まで紹介されたことの無い生き物たちを数多くご紹介します。


今でこそ、「深海生物」という言葉やその生態をテレビなどでも見ることが珍しくないのですが、40年ほど前にはそういう知識が社会にはまだまだ浸透していなかったことでしょう。
知らないから、何でも海に流せばよい時代があったのかもしれませんね。
目の前の水槽にいるさまざまな生物を実際に見ると、あの公害の受難の時代をよく生き延びてくれたと思いました。


平日でも館内は途切れることなく来館者がいて、皆さん展示に見入っていました。
そして、スタッフの解説の時間になるとたくさんの人が集まってきました。
皆、専門知識まではないけれど、目の前にある駿河湾のたくさんの生物の生活史を知るだけでも、同じ過ちを繰り返ささないための学習になっていることでしょう。



水族館のあと、10分ほど歩いて千本浜へ行き、しばらく海をながめました。


長い海岸には、散歩をする人、釣りをする人、海をぼっと眺める人などがいて、平和な時間でした。
公園や海岸も整備され、津浪対策もそこかしこにありました。
少しずつ、時代は良い方向に向いているのだと思えました。




「散歩をする」まとめはこちら