食べるということ 17 <女性が一人で食べる>

以前、「女性が一人で飲んで食べても『女のくせに』って言われなくなって本当にうれしい時代になりました」と書いたのに、1ヶ月もしないうちに言われてしまいました。


散歩の帰り道に、エスニック料理のお店に入りました。
一人だったのでカウンターの席に座り、メニューを見るまでもなくビールを頼みました。
泳いで、さらに散歩のあとの一杯は、格別ですからね。


すると、少し離れた席に座っていた私と同年代ぐらいの女性が、「え?女性一人で?」と相手の男性に話かけた内容が聞こえてしまいました。


こちらこそ、「(え?今どき、そんなことで驚かれるの?)」とびっくりしたのですが、きっと聞き間違いだったのだろうと気持ちを切り替えました。
だって、すでに私の心の中は井の頭五郎さんのテーマ曲がかかって、何を食べようかとわくわくしていましたからね。
五郎さんと違うのは、私はひとりでお酒も飲みますが。



ただ、私も少し前までは、飲食店に一人で入るのは躊躇していました。
なんだか落ち着かないし、その外食費だけでも2〜3食分の食費になるし・・・と。
それに、「女性がひとりで」というのはどう見られるのだろうというあたりも、おおいに気になっていました。


きっかけは、駅で食べたうどんでした。
それまで、「駅の立ち食いそばなんて、女性が食べるものではない」と自分の中の線引きがありました。
ところが、疲れ切った体に本当にしみわたっていく美味しさでした。
ちょっと、泣きそうになったほど。
隣りで誰が何を食べていようが気にせず、さっと食べてさっと帰っていくお客さんを見ながら、「こういう小さなお店にも、いろいろな思いがつまっているのだろうな」と、じんわりと来たのでした。


そんな時に、ちょうど「孤独のグルメ」を観るようになって、私はもしかしたら今までの人生で、おいしく食べることを半分ぐらい捨てて生きてきたのではないか、とおおげさではなく思ったのでした。


友人や家族と食べたり飲んだりもいいけれど、どうしても会話が多くなるし、他の人が何を食べたいのかも気にしながらになります。
一人で、自分が食べたいものをじっくりと食べてみたい。
そんな気持ちがむくむくと出て来たのでした。



ということで、散歩の途中で、ふらっと入ります。
あの駅そばの店も、父の面会の時には必ず寄るので、「いつものね」とすっかり常連になってしまいました。




「食べるということ」まとめはこちら