上野動物園に行くと、楽しみなのが不忍池を眺めながらビールを飲むことです。
先日は、広大な池の中にオレンジ色の蓮の蕾をひとつ見つけました。これから見頃になりそうです。
3月に行った時には、蓮も枯れているので何も見るものがないように見えたのですが、ひっきりなしに低空飛行して蓮の枯れ枝をくわえていく鳥に目がいきました。
はるか200〜300mぐらいから水面に向けて近づき、狙った枝をくわえてぱーっと飛び立って行きます。
時に、鳥の体に比べて大きめの枝だとバランスを崩しそうになるのですが、なんとか体勢を整えて飛んで行きます。
そしてその池の中にある島の、大きな木に向けて運んでいるのでした。
巣作りの季節のようです。
時々、枝以外にも園内の動物の羽や毛と思われる素材をくわえています。
ハシビロコウのふわふわの羽毛も、こうして使われているのでしょうか。
動かない動物もいれば、この鳥のように上野動物園の近隣を高度を上げながら飛び、池の上を旋回し、水に潜ったり飛び立ったり、羽づくろいを盛んにしたりとその活発な動きにこちらも目で追うだけで大変な動物もいますね。
以前だったら、空を飛んだり水に潜ったりする鳥がいるぐらいの認識で終わったと思いますが、ペンギンの潜水能力にたくさんの知りたいことが増えた今は、その潜水能力だけでなく飛ぶこともできるその鳥の存在が急に気になり出しました。
よくよく考えれば、空中から水中に潜ってそこからまた空中に飛び立つ動作ひとつとっても、すごいことですね。
人間だったら美しいフォームで飛び込みをすれば、その勢いで十数メートルぐらいは水中を進めることでしょう。
ただ、そこから浮き上がるように角度を変えても、水中と空中の境で失速していまいます。
なぜ、その鳥はそんな離れ業ができるのでしょうか。
その鳥は時々水面に浮いているのですが、そこから水面を数歩ぐらい蹴って飛び立つことだけでも「すごい!」と飽きもせずにながめてしまいました。
そして、もうひとつすごいと思ったのが、水中から飛翔して空を旋回した後、目指した枝にピタッと降り立つことです。
少し遠いのでその鳥の足がよく見えなかったのですが、おそらく水の中では水かきが必要なので、ペンギンとかアヒルに近い足ではないかと思います。
ところが、木に止まる行動のためにはむしろその水かきが邪魔になるはずなのに、グイッと枝を掴んで止まったのでした。
すごい!
その鳥の名は、カワウでした。
その後、ちょうど上野動物園の6月16日のTwitterでカワウの話がありました。
1950年の今日、千葉県大厳寺にあったカワウのコロニーから、19羽が不忍池に移送されました。大厳寺ではカワウの糞で樹木が枯れる被害がでていたことと、国内各地でカワウが減少して来たことへの対策です。
その後大厳寺のコロニーは東京湾沿岸の環境悪化のため消滅し、1970年代には国内のカワウ繁殖地は不忍池を含めた3カ所だけになってしまいました。現在、各地でカワウが増えて被害が出ていると言われていますが、ほんの40年前には絶滅寸前だったのです。
今まで見ているようで見ていなかった存在が、もう少し見えてきました。
「観察する」まとめはこちら。