水のあれこれ 66 <「息の長い選手になれ」>

世界水泳ブタペスト大会が終わりました。
古賀淳也選手の50m背泳ぎ2位と400mフリーリレーでの日本新記録5位は、ほんと素晴らしかったと思います。


また、自国開催という背中を押される中で、重圧も大変そうだったカテインカ・ホッスー選手ラースロー・シェー選手の活躍もすごかったですね。
200m背泳ぎで2位だったホッスー選手が、今までにないほどの喜びの表情をみせたのが意外だったのですが、「鉄の女」の彼女にとって自己ベストをだせたことが何よりもうれしかったのだとわかりました。


それ以外にも日本の選手も海外の選手も、惹きつけられるレースがたくさんありました。


ところが、今朝一番のNHK NEWS WEBの「水泳世界選手権 競泳でメダル7個獲得も3大会ぶりに金逃す」では、「取れませんでした」「足りませんでした」「果たせませんでした」「悔しい大会になりました」という記事が続いて、読んでいるこちらの気持ちがどんよりとしてしまいました。


同じ場面を観ていてもみているものが違うのですから、事実とは何か、本当に難しいですね。



<海外選手とのインタビューの差を伝えて欲しい>


今年5月に行われたJapan Open 2017大会で、せっかく海外選手が参加しているのに、海外選手の優勝インタビューが割愛されてしまったことを書きました。


有名な海外選手だけ、時々、優勝インタビューがありました。
世界水泳での目標を」「世界水泳での意気込みを」という質問に対して、どの国の選手も少しきょとんとした表情になり、間を置いて、こう答えていました。
「帰国したら目標に向けて計画に沿った練習を続けます」、そんな内容でした。


「金メダル」とか「優勝」という言葉を期待している日本とは、発想が異なるのだろうなと感じました。


今回の世界水泳開催中にも、準決勝のあと有名な海外選手へのインタビューが少しだけありましたが、「目標は金メダルですか?」という質問に、ふと笑って「金メダル?とれたらまあうれしいけれど、自分のベストを尽くすだけ」と答えていました。



海外選手は、自分の泳ぎを極めていくことにもっと長い視点があるのだろうな、だからタフなのだろうなとふと感じました。
是非、こういう世界大会での海外選手のインタビューも、伝えて欲しいものです。



<水泳の短期・中期・長期視点>


今年の世界水泳では、松田丈志氏が2日間ほど解説をされ、そしてそれ以外の日にはプールサイドから選手の様子を伝えていました。
勝負や技術だけでなく、そして日本選手だけでなく海外選手についても、その選手の心理や背景まで踏まえて、わかりやすい説明でした。


ああ、やはり練習内容を記録し続けたことで培われた客観性なのだろうと思います。


また、今回の大会中、web Sportivaで「松田丈志の視点」を書かれていましたが、7月23日の「五輪と世界水泳は何が違うのか」は、以下のように書かれています。

 4年に一度の五輪はアスリートにとって最高の舞台で、五輪はすべての選手が「本気」でやってくる。だから五輪は特別な舞台となる。一方、不思議に聞こえるかもしれないが、世界選手権は全員が100%本気かというと、そうとは限らない。当然すべてのスイマーが努力し、真剣にトレーニングを積んではいるが、その本気度が100%なのか99%なのか90%なのか。これは結構バラつきが出るところだ。

 また、世界トップレベルの選手とコーチは、それぞれ自分たちのいわゆる「鉄板」のトレーニングプランを持っている。これをやれば、ある程度の成果は見込める、というものだ。しかし、次の五輪を見据え、この五輪後の1、2年で「新たな取り組み」をする選手やコーチも多い。次の五輪に向けてより高い目標を持つ選手とコーチほど、変化の必要性を感じて常に試行錯誤しており、あえて「鉄板」のトレーニング法を封印している可能性もある。五輪をひとつの区切りにトレーニング環境を変える選手も多い。


そうそう、これなのだと思います。あの海外選手のインタビューの意味は。



対して、世界大会があるとメダルのことに一喜一憂し、感動のストーリーをつくり出し、そして「結果」が期待どおりでないと玉砕したかのように選手を映し出すことを繰り返しているのが日本なのかもしれません。
それは報道の問題だけでなく、社会自体が短期的な視点で変化しやすいからなのだろうなと。



「息の長い選手になれ」松田丈志氏に久世コーチが言ったのは、短期中期長期視点を持つという意味なのかもしれませんね。



世界水泳があると、連日競泳の記事になりそうですが、後日、もう少し続きます。




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