水のあれこれ 38 <抵抗を味方にする>

競泳日本選手権が終わりました。
12年間、競泳大会の会場に足を運んで来た中で、いつにも増して印象に残るレースが多い大会でした。


と言っても、会場に行けなかった日の録画は、まだすべてを見ていません。
結果は知っていても、どうしても見られないレースがあります。
あの時のように。


松田丈志選手の200mバタフライ決勝もそのひとつ。
松田選手がずっと専門にしてきた200mバタフライは引退とのこと。
オリンピックでは800mフリーリレーのメンバーとして出場できることが決まって、こちらはまた、ダイナミックな松田選手の得意としてきた泳ぎが見られることが楽しみなのですが。



もうひとつは、男子100m背泳ぎ決勝です。
4年前も古賀淳也選手はわずか0.05秒差で代表入りを逃したのですが、今回も2位との差がわずか0.08秒でした。


そのレースの録画はまだ見れないままですが、その後、100m自由形で49秒25で4位になり、400mフリーリレーのメンバーとして初めてのオリンピック出場が決まりました。
私自身が気持ちを切り替える必要がある場面では、いつも思い出す選手です。


勝ち負けとか記録だけでなく、こうした選手の方々が、泳ぎ続けるためにさまざまな抵抗となるものを乗り越えたり味方にしてきた、そんな場面が思い出されてきます。


あらがわないとか「抵抗を味方にする」とは全く反対の意味のようですが、「削ぎ落とす」というニュアンスです。


日本選手権最終日の北島康介選手の引退記者会見から、そんな言葉が浮かんで来たのでした。


Sportsnavi毎日新聞の記事は微妙に内容が異なるのですが、北島選手の雰囲気は毎日の記事のほうがうまく伝わっているかもしれません、リンクはできないのですが。


その毎日新聞のインタビュー記事のやりとりで、北島選手らしいなと思ったのが以下の箇所です。

ー自分のどこを誉めたいか
自分をほめたい、気持ち悪いなって。恥ずかしい気持ちになる。

ー若手へのアドバイス
僕がアドバイスするのも恐縮なんですけど。

ー日本水泳界に貢献できたことは
恥ずかしい回答させますよね。なんすかね、先生。先生に答えてもらった方がいいんじゃないんですかね。ありきたりな言葉になっちゃうの嫌ですね。日本人でも金メダルをとれるんだなって、ありきたりじゃないですか。どんな言葉を求めているのか知りたいです。残せたっていうほどのものは残せていないと思いますけど、感謝しかないですね。


泳ぎを極めていくために、いらないものを削ぎ落としてすっきりした北島康介選手を見たような気がしました。
そう、抵抗さえも味方にしながら。






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