存在する 5 <オオワシのいる島>

不忍池の蓮を見に上野動物園へ通ったこの夏ですが、工事中だった弁天門口が7月に完成しました。
不忍池の中の通路を蓮をかき分けながら歩いているような、極楽、極楽の気分でそのまま出口に向かうことができます。


その弁天門口の近くの小さな島に、オオワシがいて驚きました。
檻の中ではなく、カワウのように自由に飛び回っているのかと、しばらくその前で怖々と眺めていました。
なんと言っても、猛禽類ですからね。
以前、鎌倉の材木座海岸駿河湾へ行った時、飲み物をとろうとバッグの中を探しただけで、上空にいつのまにか数羽のトンビが旋回し始めたのはけっこう怖かったです。


もしかして、足に鎖がついて飛ばないようにしているのかと目をこらしてみましたが、そうでもないようです。
動物園でのオオワシ新しい展示方法なのかと思って、帰宅してから検索したところ「飛べないオオワシ」であることがわかりました。


東京ズーネットの「どうぶつ図鑑」で「オオワシ」を検索すると、「オオワシに関するニュース・催し物」でその経緯を読むことができます。


現在、その弁天門口の近くの島にいるのは「1985年に新潟県で傷ついて飛べなくなり、保護された個体です」とあります。


そして、2015年9月4日の「不忍池オオワシのオス死亡」というニュースで、もう1羽、飛べないオオワシがいたことを知りました。

 上の動物園では、西園の不忍池の小島でオオワシの雌雄ペアを飼育していましたが、今年(2015年)の8月13日、残念ながらオスが死亡しました。年齢は42歳と1ヶ月以上。長い間飼育してきた個体でした。

 このオオワシのオスは1973年2月18日、千葉県の海岸で銃に撃たれて傷を負った状態で発見され、保護されました。同年6月26日に上野動物園に来園し、当時から飛ぶことはできませんでした。当初は東園の猛禽舎で飼育をしていましたが、2002年11月11日に不忍池の小島に移動し、以来そこで暮らすようになりました。

上野動物園で保護されてから30年ほどたって、2002年に小島へ移した時のことが、2002年11月15日の「不忍池の地にオオワシあらわる」というニュースに書かれていました。

 現在おちつくまでようすを見ているところですが、困るのがカラスたち。3羽くらいでやってきて、木の上にのぼって休んでいるオオワシにちょっかいを出すのです。「猛禽」とはいえ、カラスあいてのオオワシは鷹揚なようす。むしろ困っているようにも見えます。なんどか、カラスがあんまり近よってくるので、逃げようとしたオオワシは、1メートルぐらいの高さにある「巣」からポチャンと池に落ちちゃいました。カラスめ〜。


 島のまんなかには、人工的に水がわきあがってくるようなつくりになっていますが、いずれここに魚を放して、オオワシの餌とすることも考えています。これなら、カラスに横取りされる心配がありません。今は、オオワシには鶏類などを与えています。


銃に撃たれたことが原因で飛べなくなりずっと保護されていた話で泣きそうになり、カラスにちょっかいを出されていたことで、また泣きそうになりました。
でもオオワシ気持ちなんて誰にもわからないし、そのあたりで自分の感情に酔ってはいけないと思い直しました。
オオワシに狙われた動物や魚たちもいるわけですしね。


ただ、このニュースを読んだあとは、弁天門口近くのその島には飛べないオオワシが2羽いる、そう、今も2羽いるかのように存在が大きく感じられるようになったのでした。




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