観察する 38 <「ただひたすら観察するという原始的な方法」>

今日のタイトルに引用させていただいたのは、「水草を科学する」の中に書かれていたものです。


「第3章 水草はどのように子孫を残すのか」の最後のほうに以下のように書かれていました。

 じつは、クロモの受粉方法の詳細は10年ほど前までよくわかっていませんでした。雄花が浮上する仕組みや、水面の雄花の花粉が雌花の柱頭に付着する過程が未知だったのです。こういう研究は興味があるかないかだけが勝負です。10年ほど前に私は、栽培しているクロモが開花するところを、ただひたすら観察するという原始的な方法で、光合成の酸素で雄花が浮き上がることや、一部の飛び散った花粉が直接雌しべに付着するものの、ほとんどは水面を移動して受粉が起こることなどを発見しました。一般的な植物の花粉は、水に濡れると生殖能力がなくなってしまうので、水面を移動した花粉も生殖能力があることなども確認して、この仕組みが明らかになりました。
(p.136)


目の前の現象の何がわかっていないのかが整理されることと、その現象に興味を持てるかどうかが勝負であるというあたり、新生児哺乳行動についても同じだと読みながら大きくうなずいたのでした。


目の前の新生児についてわかったつもりになっているから、「ただひたすら観察する」という発想には至らず、「授乳方法」や「育て方」といった思想や理論や方法論ばかりに目がいってしまうのでしょう。



鶴見良行氏が「あまり理論化を急がない方がよい」と言われたことは、あらゆる分野で言えるのではないかと思います。



出生直後からのヒトの新生児の変化を、ただひたすらに観察するという原始的な方法を試みた人はいるのでしょうか。
もしかしたら、動物園や水族園の種よりも観察されて来なかったのではないかと思えるのです。





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