観察する 50 <見ているはずなのに見ていない>

4月の半ば、公園のつぶやきで蓮の葉が出始めたとありました。
その写真では、蓮の葉は「新緑」ではなくすこし赤みがかった色をしていていました。
そうだ、今年は蓮の定点観測をするつもりだったことを思い出したのでした。


さっそく、不忍の池に行きました。さっそくといっても、それから1週間以上たってしまったので、あの池がすでに成長した緑色の蓮の葉でいっぱいになっていたらと心配しましたが、まだぼちぼちと新しい赤みを帯びた葉が少し出ているだけでした。
よかった。今年は、是非、この新芽からの成長を見届けようと目標ができました。


不忍の池の横には、両性爬虫類館があります。
ここもけっこう気に入っていて、上野動物園に行くと必ず立寄ります。2015年から通い始めて、もう何回入ったことでしょうか。
オオサンショウウオとかアジアアロワナを眺め、けっこう好きなトカゲ類を見て進んで行くと、大きなガラパゴスゾウガメがいます。その先は、ビビリながらも見るのは好きなへび類が展示されています。
ある時、ふとマレーガビアルが目に入り、それからはその動かなさとワニの姿に惹きつけられています。


名前までは覚えきれないのですが、だいたい両性爬虫類館の動物を把握したと思っていたのですが、先日、見ていたはずなのに見えていなかった存在に気づき、ショックを受けました。


それは、展示の最初の方にある大きな水槽にいたイリエワニです。
そこに水槽があるのも「知って」いましたし、その中の魚を眺めてから次にアジアアロワナを見て奥へと進んでいました。


大きな岩ぐらいにしか認識していなかったところに、イリエワニがいたのでした。
「現在のワニ類および爬虫類の中では最大級の一種であり、平均は全長7メートル、体重150キログラムになる」とありますが、その爬虫類館のイリエワニも数メートル以上はある大きな個体です。


なぜ、イリエワニが見えなかったのか。
イリエワニ側からすれば、敵に見つからないようにするという意味では大成功なのですけれどね。
外見が岩に同化して見えるだけでなく、マレーガビアルと同じく、まったく呼吸をしている気配さえわからないほど微動だにしないのです。
しばらくその場で眺めていると、ゆっくりと体幹のあたりがわずかに上下することがあります。
iPhoneストップウォッチで計測してみたら、おおよそ2〜3分に1回、そういう動きがあります。
マレーガビアルよりは呼吸数が多く、呼吸による動きがわかるかもしれません。


それにしても、今まで見ていたはずなのに見えていなかった。
老眼にはなりつつあるとはいえ、遠いところまでよく見えます。
若い頃から、私はぱっと見て全体を把握することが得意だと自負していました。
もしかしたら、私は人生のいろいろな局面でこれをやらかしていたのではないかと、冷や汗がでたのでした。


観察ではなく、見ただけで思い込みに囚われるということを。




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