私の高校時代に「地理」の授業を受けたかどうか覚えていないのですが、あったとしてもその頃始まった共通一次試験では選択する人が少ないマイナーな教科だった記憶があります。
ですから地図が大好きでも、ただ眺めて楽しむぐらいでした。
数年ぐらい前からブラタモリを観るようになって、高低差という視点が加わり、実際に歩いては地図が立体的に感じる面白さがわかるようになりました。
通勤電車の車窓から、住宅街の高低差を見ているだけでも楽しいものです。
最近、さらにハケ上とハケ下を知り、かつての水の流れが想像できるようになりました。
そして地図の中の水色の部分(川とか池とか)がなぜそこにあるのか、パズルを解くように見えてくるので本当におもしろいです。
ということで、今回は渋谷から新宿までハケ下を歩いてみた前半です。
<駒場東大前から鍋島松濤公園へ>
井の頭線の駒場東大前付近は、駅が少し高いところにあり、南側に駒場野公園から続く高い地形になっていることがわかります。
そこには駒場野公園内にある池を源流とする空川が、東大前商店街を流れて目黒川に合流することが「東京地形散歩」に書かれています。
なるほど、両岸が高くなっていて以前は川が流れていた場所だったのだと理解できたのですが、実際に歩いたことはありませんでした。
それで、今回は駒場野公園からスタートし、「水が流れていた場所にはハケという境界線があるはず」というテーマで歩いてみました。
駅前からくねくねと商店街の道が通っているのが暗渠化された空川だったことがわかります。
そこから南側の崖に近いところに近づくと、そのハケに沿って道があります。
ところどころ以前は水路だったのではないかと思う場所もあるのですが、横道に逸れずにハケに沿って道なりに歩くと、井の頭線の線路下の道に出ました。
そこから空川はさらに南へと流れるのですが、今日は新宿方面へ歩くので、一旦坂道を登って山手通りへ。
山手通りを渡って渋谷方面へは、けっこう急な下り坂になります。
「道玄坂」とか「スペイン坂」とか、坂が多い街です。
その坂道の途中に、鍋島松濤公園があります。
20代の頃から渋谷は最も遊んだ街でしたが、10年ほど前に初めてこんな公園があることを知りました。
しかも大きな池があることを。
当時はその池の写真をみても平坦な場所にあるのだろうというイメージでしたが、実際にいくと、すり鉢状に窪んだところに池があります。
山手通りが尾根で、そのハケ下にある湧き水であったことが理解できたのでした。
<富ヶ谷から代々木へ>
しばらく尾根である山手通りを歩くと、ハケ上である山手通りからの斜面はただの下り坂ではなく、段丘になっていることがわかる場所がいくつかありました。
通常の地図では平坦にしかみえないのですが、山手通りに並行に走っている道路に少しずつ高低差があります。
今日のルートは、高低差がわかる地図だと富ヶ谷二丁目の交差点の少し手前から代々木公園方面へと窪みになっている箇所です。
こういう箇所を「谷頭(コクトウ)」と呼び谷の最上流部であることを、「ハケ」とともに最近知りました。
通常の地図ではすこし湾曲があるようにしか描かれていない道なので、うまく見つけられるだろうかというのは杞憂で、すぐにわかりました。
ただし、普通の道ではなく細い暗渠のような道が民家の庭先に通っています。
不法侵入になるのではとビビリましたが、ちゃんと階段もついていたので道だったようです。
なぜその場所がすぐにわかったかというと、切り立つような崖に沿ってその道が始まっていたからです。
崖に沿ってびっしりと家が立ち並んでいましたが、崖を目印にして道なりに歩くと、全く道に迷うことなく代々木公園駅に通じる大きな道にたどり着きました。
「ハケ下を歩く」っておもしろい!
「ハケ」という言葉を知ったおかげで、地形がもう少し見えて来ました。
ここから、いよいよ「春の小川」を通って、かつて水田のあった場所を歩きます。
ということで、もう少し続きます。