ぼたん

東京ズーネットの1月8日のtweetに、「おとなになったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝いはげます」というメッセージとともに羽ばたいて飛んだハシビロコウの動画があり、無性にハシビロコウに会いに行きたくなりました。


ということで上野動物園へGO!となったのですが、その日は成人の日の振り替えで休園日でした。
出勤日がカレンダー通りの仕事ではないので、世の中の連休のことをすっかり忘れていたのでした。


せっかく来たので、普段は素通りをしているところも歩いてみようと思ったら、「上野東照宮 ぼたん苑」の看板が目に入りました。
冬ぼたんの展示が2月中旬まで行われているということで、ふらりと入っていました。


道ばたの草花が目に入るようになって10年余り過ぎたのですが、メジャーな花や展覧会というのはあまり関心がありませんでした。
散歩をするようになって、こうした植物園や展示を見るようになって、手間ひまをかけて育てていることはもちろん、そこにはそれぞれの植物を詳細に観察してその生活史を明らかにする努力なしには、花は咲かない(再現されない)ことに圧倒されています。


ところで、ぼたんってどんな花だったでしょうか。
もし絵を描けと言われたら、シャクヤクダリアともつかない花になりそうです。


苑内に入ると、まず印象的だったことが、ひとつひとつのぼたんに藁囲いがされていることでした。
それが「冬ぼたん」で、さらに「寒ぼたん」があるそうで、その違いがパンフレットに書かれていました。

 毎年元日から2月中旬まで当苑でご欄いただける牡丹には、「冬ぼたん」と「寒ぼたん」の2種類があります。
 牡丹には早春と初冬に咲く二期咲きの品種があり、このうち低温で開花した冬咲きのものが「寒ぼたん」と呼ばれています。気候に大きな影響を受けるため、着花率は2割以下と低く、咲かせるのが極めて困難となっています。
 それに対して、春と夏に寒冷地で開花を抑制し、秋に温度調節をして冬に開花させるという特殊な栽培の技術を用いて咲かせたものが「冬ぼたん」です。
 花の少ない冬、縁起花として新春に華やぎを添えるため、丸2年を費やし育成される「冬ぼたん」。藁囲いの下で、楚々と咲く可憐な姿は、見る人の心を魅了します。


丸2年を費やすところにもちょっとめまいがしそうでしたが、Wikipediaの「ぼたん」の「園芸」に書かれている、「従来は種からの栽培しかできなくて正に『高嶺の花』であったが、戦後に芍薬を使用した接ぎ木が考案され、急速に普及した」という箇所に、それにはどれだけの試行錯誤や失敗があったのだろうと、その行間の重みを感じました。


ぼたんというと、なんだか華々しくて私の好みではないと思い込んでいたのですが、目の前の花はまさに「楚々として可憐な花」でした。


もうひとつ、この上野東照宮ぼたん苑は「1980年(昭和55年)4月、日中友好を記念し開苑」とあります。
1972年のパンダと1980年のこのぼたん、贈られることが決まってからの40〜50年間というのはあっという間のようで、考え出すと人間の社会にはめまいがしそうなほどの時代の変化があって、でもそれを感じさせない動物や植物の存在がまた大きく感じられたのでした。