存在する 9 <生まれたこととその個人が生きて来たことの証明>

父が亡くなった後の諸手続きで、一番驚いたのが、「父が生まれたことを証明する戸籍謄本」が必要ということでした。


こちらの記事の「出生証明書は誰の名前にするか」に書いたように、仕事柄、日常的に出生証明書を書いているのですが、それが死後、こういう形で必要になるのかと初めて知りました。


父名義の預金や生命保険を母の名義にするために、「父が出生」した時点までさかのぼった戸籍謄本が必要になりました。
まずは東京にあった本籍地の区役所を訪ねましたが、それ以前のものは北海道に問い合わせが必要でした。
父の場合、北海道で出生までの戸籍謄本がすぐに見つかったので助かりましたが、何度も本籍を変えた場合には大変なようです。


それでも、大正生まれなので、途中で戸籍法の変更によって書式が変わったとかで、1通では済まずに2通になり、金額も倍額になりました。
申請をする私たちも父の子であることの証明が必要なので、自分たちの戸籍謄本を取り寄せたり、ほんと、これらの申請だけで万単位の出費になります。


母が亡くなったら、この作業をもう一度するのかと考えるだけで、また気が重くなります。
親が亡くなって、悲しむとか思い出に浸るというよりも、そのあとの膨大な手続きに翻弄されるのはいったいなんだろうと、初めての経験に驚きました。


マイナンバーカードはどこまで何を証明するのか>



さて、母は今、サービス付き高齢者住宅入居中に体調を崩し、老健のような施設に移って老人ホームの入居待機中です。
住民票はまだ、サービス付き高齢者住宅にあるのですが、そこも1ヶ月ほどで引き払うことになっているので、その後の待機中の「住所」がどこになるかという問題が起きることがわかりました。


老健のような施設は一時的なものなので、そこには住民票は移せません。


介護保険や年金といった重要な書類は、郵送で住民票がある場所に送られてきます。
それをどう受け取るかという問題が起きてしまうことになります。


母の今の本籍地は、先日実家を解体した借地の住所のままです。
住民票は、しばらくは「架空の住所不定」のような状況になってしまうようです。
そして、老人ホームに入所できたら、また住民票を移し、さまざまな書類の住所変更をし、そしてマイナンバーカードもまた新しい住所で作り直すことになります。
ああ、その事務処理にまた時間と交通費が飛んで行くのかと思うと、恐怖にすら感じます。


マイナンバーカードについて検索していたら、スウエーデンのシステムが書かれたサイトがありました。

スウエーデンの個人番号制は、Personal Identification Number:PINと呼ばれています。例えば、子どもが生まれたタイミングで、病院は国税庁にそのことを知らせる義務があり、国税庁はその申告を受けて、PINを新生児に付与し、そうすると児童手当が親の申請がなくても自動的に支給されるというような具合です。
(「まもりの種(日本パープル)」のサイトより)


こういうシステムがあれば、死んでから「出生までさかのぼった戸籍謄本を家族で取り寄せろ」なんてこともなさそうですし、児童手当から成人してからの社会保障にもリンクさせられそうですね。


すぐには無理でも、半世紀か1世紀後を見据えて、こうした「自分を証明するもの」の制度の簡略化が進むとありがたいと思います。



日本のマイナンバーカードは、何をしたいのか今ひとつメリットが見えて来ないのがもったいないですね。



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