事実とは何か 50 <災害の全体像、総論が明文化され始めた>

防災というと、「災害に何を備えておくのか」「災害が起きた時にどのように避難するのか」については、幼稚園児とか小学生の頃から必ず学ぶものでした。
特に、災害とは地震を指した訓練が多かった記憶があります。


東南アジアで暮らした地域は台風も地震もない地域でした。その国でも、台風の被害が毎年甚大でニュースになる地域もあるのですが、気候や風土というのは一国のなかでも大きな違いがあるのは日本と同じでした。


その地域から招待した時に、雪に感動した友人地震も初めての体験で、相当恐怖に感じたようでした。
確か震度3程度で、私にすれば日常茶飯事のレベルでしたが、真っ青になり半ばパニックになりそうな友人の姿に驚きました。
「外人が村にやってくる」ということに書いたように、草の根運動のリーダーとして政府軍にも立ち向かう勇敢な彼女にも、地震は未知の経験だったようです。


彼女が、子どもの頃から軍事政権下でどう生きていくかを大人から学び続けたように、私も子どもの頃から防災教育で訓練を受けていたことが、やはり役立っているのかと変に感心したのでした。


<災害が起きたあとどう生活するかについては学ぶ機会がなかった>


災害が起きた時できるだけ安全に避難する、非常物品をまとめておくぐらいはなんとか思いつくのですが、実際には「どんな災害がいつどのようにやってくるのか。その時に自分はどこにいるのか」全く予測がつかないので、案外、「備える」ことも難しいものです。


非常物品は、「急な入院に備えて」を想定しながらまとめてみるのですが、何をどれだけとなるとけっこう難しいものです。
季節によって衣類も全く素材が異なりますから、どこで入れ替えるかという手間に躊躇してしまい、結局、あの東日本大震災のあとに切迫感をもってまとめた非常物品も、一度見直しただけになってしまいました。


さらに予測がつかないのが、「長期に自宅で生活できないような状況」になった場合、どのような生活になるのかというあたりです。


テレビで避難所生活をされている方々の様子を見るたびに、こうして体験された方々の経験が伝わっていかないもどかしさを感じています。


<災害発生から復旧まで、事実を記録していく>


こちらの記事で紹介した「なるほど地図帳 日本の自然災害危機の対策」(昭文社、2014年)には、「第6章 ライフラインと行政」として電気・ガス・水道・通信・交通などインフラは災害が起きるとどのような対応をし、どのような復旧の対応がされるのかが書かれていて参考になりました。


また、警察・自衛隊・消防・海上保安庁などが災害時にどのような活動をするのか、簡単にですが、まとめてありました。案外、知っているようで知らない具体的な内容と言えるかもしれません。


また、「第7章 個人でできる災害対策」では、「被災者の方々はいったいどのようにしていらっしゃるのだろう」と気になっていた事柄がまとめてありました。


従来の、災害の備えや災害時の行動といった内容だけでなく、被災した時の「お金と制度」にかなりのページを割いています。
被災した時の所得税減免とか、現金が燃えてしまったり引き出すための身分証明書をなくした場合はどうしたらよいかとか、さまざまな書類の再交付手続き、生活再建のための資金援助や融資制度などについてまとめてあります。


「災害時の短期・中期・長期の視点」に書いたように、「どの程度で、どのようにインフラなどの復旧や生活再建が進んでいくのか」という全体像、言い換えれば「総論」のようなものが、だんだんと明文化されてきたことをこの本から感じたのでした。



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