10年ひとむかし 69 災害時の対応の変化

東日本大震災を機に、災害について考えるようになりました。

あれからもうじき10年ですが、阪神・淡路大震災以降指定された6件の特定非常災害のうち4件がこの10年に起きているようです。しかも2016年以降は立て続けです。

 

大きな災害のたびに経験が次に生かされていることがあるのだと思いますが、案外と気づかないままで、ついまだまだ足りないことばかりに目がいきそうになります。

 

*5段階の大雨警報レベル*

 

ここ連日、目にしている大雨警戒レベルですが、「5段階の大雨警戒レベル」(NHK NEWS WEB、2019年6月29日)という、ちょうど1年前の記事が目にとまりました。

 警報や注意報、避難指示・避難勧告など大雨の際には多くの防災警報が発表されます。しかし、複雑でわかりにくいため、必ずしも住民の避難行動に結びついていないという実態が2018年の西日本豪雨で浮き彫りになりました。このため国は2019年から大雨の際に発表される防災情報を5段階のレベルに分けました。「各レベルはどういう状態なのか?」「いつ避難を始めればいいのか?」みて行きます。

 

現在の警戒レベルは2019年から使われ始めたものであることが、すでに記憶から抜け落ちていました。

 

*プッシュ方式*

 

7月7日の官房長官の会見ニュースで、「プッシュ方式で速やかに救援物資を送る」というような話がありました。

 

「プッシュ方式」ってなんだろうと検索したところ、「災害法体系について」(内閣府政策統括官(防災担当)付、参事官(総括担当)付)という資料を見つけました。何年の資料かわからなかったのですが、「物資等の供給及び運送」(p.17)に「平成28年熊本地震に置けるプッシュ型物資支援の実績」が書かれていました。

平成28年4月16日(土)の熊本地震本震後、直ちに非常災害対策本部事務局に「物資調達・輸送班」を設置し、熊本県からの要請を待たずに、プッシュ型による対応を含め、[計約278万食]の支援を実施

 

この「プッシュ型」は、東日本大震災の教訓が生かされたものだそうです。

災害時の救援物資の調達・輸送については、基本的に地方公共団体が対応することとなっているが、東日本大震災の発災当初において、地方公共団体の行政機能が著しく低下しており、地方公共団体からの需要追従型であったため、被災者に必要な物資が適切なタイミングで供給されなかった。

→被災地からの要請がなくても物資を送り込む「プッシュ型」の物資調達・輸送体制の構築の必要性

 

これを踏まえて、平成24年災害対策基本法を改正して、「物資等の供給及び運送」に関する規定を新設し、市町村長は都道府県知事に対して、都道府県知事は指定行政機関の長または指定地方行政機関の長に対して、物資等の供給について要請することができること、緊急を要する場合には都道府県知事、指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長は、要請を待たずに 自らの判断で必要な措置を講ずることができること、また、運送事業者である指定公共機関等に対して物資等の輸送を要請等できることなどについて規定

 

こうした現場を経験したことがないのですが、きっと現場のニーズが法律を変えたのではないかと想像しています。

 

伊勢湾台風を機に制定された災害基本法の名前は知っていても、具体的にその法律がどのように変化しながら活用されてきたのか、あまり気にもとめてこなかったので、この資料はとても参考になりました。

 

*冷静な呼びかけが増えた*

 

7月4日に熊本の豪雨の様子をニュースで初めて観た時に、どの局だったか忘れてしまったのですが、現地で取材されている方が落ち着いた声で話されていました。

今までの災害時の報道の中でも印象に残る静かな話し方でした。被災されている方へのインタビューも、その静かな話し方だけで相手を慮っている様子が伝わってくるものでした。

 

この10年ほどで、こうした感情を抑えて客観的に伝えてくださる記者さん、あるいは政府関係者の皆さんが増えたように感じます。

 

 

新型コロナウイルス対応だけでも未曾有の事態に、こうして粛々と対応されている方々に守られているのだと改めて感じました。

 

10年の間にさまざまな経験が生かされて災害対策が改善していることもあるのですが、私自身もまたあまりに災害対応について知らなさすぎたことからようやく、世の中の流れが少し見えてくるようになったあたりかもしれません。

 

 

 

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