散歩をする 69 <中の橋から井の頭公園>

中の橋からスタートし、都市計画道路沿いの玉川上水の変化を見ながら、その日の散歩のゴールは井の頭公園に決めました。


久我山のあたりは地名に「山」とありますが、玉川上水沿いは比較的平坦な土地が続いています。
ところが、人見街道を越えて牟礼1丁目や井の頭1丁目あたりから玉川上水周辺の風景も高低差が大きくなります。


玉川上水の緑道には、地形や歴史を解説した板がたくさんあるので、それを読むだけで勉強になります。
以前は、あっても目に入らず通り過ぎていました。

貴重な土木施設・遺構としての歴史的価値


 玉川上水は、約43kmの区間を約92mの高低差(100mでわずか約21cmの高低差)を利用して、水を流すように設計された長大な土木建設遺構です。
 特に、小平監視所から浅間橋までの中流部には、開削当時の素掘りの水路・法面(のりめん)が多く残され、往時の姿を今日に伝えています。
 玉川上水は、近世の水利技術を知る上で重要な土木施設・遺構であることから、平成15(2003)年8月、開渠(かいきょ)区間約30kmが国の史跡に指定されました。

蛇行する玉川上水


 井の頭公園からどんどん橋付近にかけては直線が多い他の区間に比べて、蛇行する場所が多くなっています。
 これは、この地域が入り組んだ複雑な地形をしており、その中で少しでも高い地点を選んで水路を引いたためです。
 このことからも、玉川上水が、わずかな高低差を利用して水が流れるよう設計されていることがわかります。

確かに、井の頭公園に向かって複雑な流れになって行きます。次第に玉川上水の両岸の高低差が大きくなる場所が増えて、山の中腹の斜面を掘削したかのように見えます。
あるいは、そばに広がる公園も平坦ではなく、斜面になっています。
おそらくこの場所なら、未来永劫、そばに都市計画道路を建設しようということにはならなさそうな地形です。


地図を見ていると、井の頭線の北側には井の頭通りを始め鉄道に並行する車道があるのに、南側は道路が細くまっすぐな道がないことが以前から気になっていました。
ですから久我山近辺の都市計画道路の話を聞いた時にも、ただ「車社会に対応するための車優先の公共事業」「環境を考えず、古い大事な遺跡を壊す計画」というイメージで受け止めていました。


ところが、前回紹介した東京都の放射第5号線の事業のあらましを読んで、はっとしました。

東西方向交通の分散が図られることによる交通渋滞の緩和と走行速度の向上
玉川上水保全と環境施設などの設置による水と緑のネットワークの形成
*生活道路への通過交通の減少による歩行者の安全性の向上と居住環境の改善
消防車や救急車など緊急車両の円滑な通行と災害時の避難路の確保


蛇行する玉川上水の流れるこの地域には、東西方向には道路を建設しにくい地形であり、緊急車両の走行も遠回りせざるをえない箇所が多いのだろうと、実際に歩いて感じました。


いえ、20数年前も何度か歩いたのですけれど、その時には「美しい玉川上水を守ってほしい」という気持ちが強くて、地形まで考えたことがなかったのでした。




「散歩をする」まとめはこちら