仕事とは何か  8 <何のためにそれをしているのか次第に明らかになる>

今年の夏は、暑さといい、地震水害といい災害を常に意識していた毎日でした。
地震や水害の復旧作業も、熱中症になる危険性を冒しての作業を余儀無くされるわけですから、その現場にいらっしゃる方々の大変さはいかばかりだろうと思いましたが、正直なところ、想像できない世界です。


日中だけでなく夜間も気温が下がらない中で、外での修理や保守整備に携わる方々はどうやって仕事のために体調を整えていらっしゃるのでしょうか。


ところで、日本語には「作業員」という言葉があります。
weblio辞書では「作業に従事する人。主に作業現場で肉体労働に従事する人を指すことが多い」とあり、その意味そのままなのだと思います。


ただ、ニュースの事件などで時々、「(犯人は)20代の作業員」といった使われ方をすると社会の、というよりはマスメデイア側の潜在的な感情を感じ取ってしまうことがあります。
おそらく、Wikipediaブルーカラーの説明にあるような気持ちが伝わって来るのです。
「肉体労働」といっても、最近では相当専門が高度化、分化しているのではないかと、散歩をしてあちこちの上下水道の施設や道路などを見るたびに思います。正確に施工されなければ大事故につながるのですから。
ところが、作業現場で泥まみれになっている人の多くが「会社員」だと思うのですが、なぜか会社員という言葉を使わずに作業員と呼ぶ潜在的な理由のようなものが。


どうしてそのことが気になるか記憶をたどっていくと、高校時代の友人のことを思い浮かべるからかもしれないと行き着きました。


<「指一本まで集める」>


私が通ったのは地方の進学校でしたが、「女性はせめてあるいはせいぜい短大まで」と言われていた70年代終わり頃、女子だけでなく男子の中でも専門学校の進学も諦めて就職する人がいました。


友人のことを、いまでもいつも思い出します。
卒業して2年ぐらい過ぎた夏休みに、仲が良かった数人と久しぶりに会いました。
他の人よりも一足先に社会人になったその友人は、鉄道会社に就職して、線路の保守点検をしているということでした。
何も気にせず乗っていた電車でしたが、この高校時代の友人が整備していることがすごいと思えて急に目の前の彼が大人びて見えました。


その友人から衝撃の一言を聞きました。
「人身事故があると、指一本まで、見つかるまで探す」と。
当時、看護学生だったので解剖見学で「死」をみていましたし、常に生と死を考えていたので、友人の話が猟奇的な話として記憶に残るのではなく、「人(ご遺体)に対する尊厳」と受け止められたのは幸いでした。


この話を聞いて以来、人身事故があるたびに、そして線路の保守点検をしている方々を見ると友人のことを思い出しています。


当時二十歳だった友人は、「なんでそんなことをしなければならないのか」という理不尽に対しての愚痴もあったのかもしれません。
でもきっと、その先にある「仕事とは何か」という漠然としたものを感じ取っていたのかもしれないと勝手に想像しています。




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