散歩をする   93 <谷津干潟と海の神様>

私の散歩コースは、地図をつらつらと眺めることで決まることがほとんどです。
暇ができると地図を眺めています。
穴が開くほど地図を眺めているはずなのに、時々見ているはずなのに見ていないものに気づくので、ちょっとヒヤリとしながらもまた新たに目的地を見つけたことが楽しくもあります。


江戸川河口から京葉線沿いにたどっていたら、水色の四角の場所が目に入りました。市川塩浜駅の前には宮内庁新居浜鴨場があることは知っていましたが、船橋の近くにあるその部分は、今まで何度か見ていたはずなのにどうも印象に残っていなかったのでした。
それが谷津干潟です。


「谷津」と聞いただけで、その地形を想像できるようになったので、ここ何年か実際に歩いて地形を学習してきたことも無駄ではなかったと満足。


そして近くを京成線が走っているのですが、その谷津のあたりからJR中央線総武線にぐいっと近づきながら大きく湾曲している場所があります。
それを見ただけで、きっと段丘のそばを走っているに違いない、実際に見てみたいと思いました。
さらにその先に、「海神」という地名と駅名があります。地図では沿岸には見えない場所に海の神様の地名があるとすれば、埋め立ての跡があるに違いない。
散歩のコースが決まりました。


船橋の記憶>


谷津干潟習志野市ですが、船橋市と接しています。「船橋」というと、幼児の頃に遊びに行った船橋ヘルスセンターをまず思い出します。ヘルスセンターといっても「保健センター」ではなくて、今でいうスパリゾートのような施設です。
都内に住んでいた頃で、父の運転で遊びに行った記憶がかすかにあります。
当時は高速道路もバイパスもないので、相当、時間がかかったのだろうなと思います。
船橋ヘルスセンターのその後がずっと気になっていたのですが、船橋駅前のららぽーとへと現在は変化したのですね。


私自身は船橋へ行ったのはそのときだけではないかと思うのですが、愛読していた椎名誠氏の本で、このあたりがまだ埋め立てされる前に生活していた話がありました。それで、あの堀江ねこざねの街を歩いた時のように、船橋が遠浅の海に面した漁師町だった時代を私自身も経験したような気持ちになるのです。



谷津干潟


秋晴れの爽やかな日に、京葉線船橋から歩き始めました。
駅の目の前に競馬場がります。を見ることができるかと期待したのですが、高い塀に囲まれていて残念ながら見えませんでした。


京葉線は沿岸の工業地域を通っているので、海の景色というよりも工業地帯の風景が続きます。
南船橋駅の前がすぐにトラックなどの交通量の多い道路で、排気ガスと騒音の中、今日の散歩コースの選択は失敗だったかと後悔しました。


せっかくきたのだからとりあえず行ってみようと気を取り直したのですが、幹線道路に面しているのに干潟に一歩中に入ると別世界が広がっていました。


干潟に沿って遊歩道で一周できるようになっています。
中央にある谷津公園には深い森が残っていました。よく見ると、公園の北側が3mほど高くなっています。
ああ、やはり「谷戸」なのだと、この地形を確認できただけで満足。
もしかしたら、干潟に流れる湧水があるかもしれないと探して見ましたが、それは見つけられませんでした。


高速道路に挟まれ、工業地帯が広がる一帯です。あの駿河湾や全国あちこちの工業地帯と同じく、60年代から70年代の凄まじい公害の時代を乗り越えて干潟の一部が残っているのですから、すごいことだと思いました。Wikipediaの説明を読むと、一人の方が干潟を残そうとゴミを拾い、長い年月をかけて保存を呼びかけて来られたことがきっかけのようです。



<昔の海岸線と思われる場所を歩く>



地図で見ると、船橋津田沼のあたりは平地に見えます。
京成線も沿岸の平地を通っているのだとイメージしていました。


谷津干潟を出てから、京成線谷津駅に向かって歩いて見ました。
谷津遊園があったそうですが、当時は賑やかだったのだろうなと思う商店街がありました。
一見、どこにでもある少し活気が衰えた商店街だろうと思ったのですが、歩いて見て、なんだかホッとする雰囲気がありました。
お店の数は少なくなっているのに、さまざまな年代の人たちが買い物に来ていました。
通りのあちこちに石で作られたベンチがあります。それが理由かもしれません。


商店街を抜けると谷津駅があります。千葉街道に沿って歩いたのですが、線路の反対側はどこも2〜3mから数m、海側よりも高くなっています。
この辺りが、昔の海辺だったのかもしれません。
京成線はその段丘との境目を走っている感じです。
海側には細い路地がところどころあって、砂浜に通じる路地の跡に見えました。


この辺りに干潟が広がっていた時代の風景はどんな感じだったのだろう。
今度は、郷土資料館を訪ねて資料を読んで見たいと思いました。


船橋駅まで歩いたところで、日が落ちてしまいました。
「海の神様」の地名がついた場所はどんな地形なのか、電車の車窓からはよく見えず残念。
また次回のお楽しみにということにします。



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