新生児の哺乳行動とは 8  <赤ちゃんの眠りと行動1 出生直後から2〜3日まで> *2013年6月30日訂正あり

久しぶりに、新生児の哺乳行動についての続きです。


赤ちゃんが「眠らない」とたいがいが「足りない」と受け止められてしまいますが、本当にそうだろうかということを考えてみたいと思います。
とらねこ日誌にも*「母乳育児を考えるーその5<10.赤ちゃんの眠りと行動>
で書きましたが、もう少しそれに補足してみました。



出産から退院まで数日前後の入院期間のことが多いと思いますが、わずかその数日でも新生児の「眠り方」は変化しています。
ここからは私の観察に基づく個人的な解釈ですので、エビデンスレベルはとても低い話と思って読んでください。


<出生直後の覚醒期>


出生直後の新生児には2時間前後の意識が明確な覚醒時間があることはだいぶ知られてくるようになりました。
泣くわけでもなく、時々しっかり目を開けて静かにしている新生児が多いです。
(カンガルーケアをしていなくても、あるいは自宅分娩や助産院分娩でなくてもこの時間は静かにしています。)


出生直後の新生児がはっきり目を開けている状態というのは、大きく2種類あります。
呼吸状態が安定していないいわゆる新生児仮死で「危機的」な状況にあると、しっかり目を開けていることがあります。
「キッ」と目を見開いているという感じです。


そして出生直後の自力での肺呼吸も問題なく始められて状態も安定している新生児にも、目を開けてじっと見つめている状態があります。
「これがお母さんの顔なのか・・・」「これがお腹の中で声を聞いていたお父さんやお兄ちゃん、お姉ちゃんの顔なのか・・・」と、まるで世の中を見渡して確認するかのような表情をしています。


呼吸数や呼吸状態あるいは全身状態を見れば、状態が悪いかそうでないかだいたい判断はできます。


状態の安定している新生児だと、しばらくすると何かを探すように動き始めることが多いです。そんな時にそっとお母さんの乳首の近くに顔を近づけると、乳首を見ながら口に入れようとする行動が出始めます。
でも最初はちょっと口に入れてペッと吐き出して、「毒見」をしてから吸いはじめます。
吸い始めた新生児のほとんどが、目を閉じています。
そしてそのまま、まどろむようにして一旦深い眠りに入ることが多いようです。


でも全員ではなく、中には覚醒していてもおっぱいを吸わない場合もあるし、そのまま浅い眠りで30分から1時間ごとに激しい泣きかたをして深い眠りにならない新生児もいます。出生後すぐに母子同室・添い寝をしても、そのような場合があります。


<出生当日から生後2〜3日まで>


この生後2〜3日までを私は勝手に「新生児のうんちとの闘いの日」と呼んでいますが、胎便から移行便、そして母乳便・乳便に劇的に変化する時期です。
そのあたりについては、こちらの記事こちらの記事で書きました。


出生当日から生後1日にかけての新生児の眠りは浅い眠りが多く、時には眠っているのではなく「目を閉じているだけ」ではないかと思われる状態もあります。
これも私が勝手に呼んでいるのですが、体内に「置き去り防止センサー」があるかのように、周囲に人の気配が無くなるとパッと目を開けたり泣き始めたりします。
「周囲」というのは、具体的には半径50cmぐらいというところです。


激しく泣いて、しばらくしてゲポッとしてほっとしてまどろんでを繰り返して、うんちが出ると少し深い眠りになります。


また比較的に深く眠る時間帯と、浅い眠りかほとんど眠っていない時間帯もあります。
深い眠りと浅い眠りの違いとは、周囲に人の気配が無くなった時にすぐに「置き去り防止センサー」が作動して泣き始めるか泣かないかというところあたりです。


出生直後から2〜3日の新生児でも、日中は比較的深い眠りが多く、時には数時間ぐらい眠っていることもあります。周囲でバタバタしていても起きなかったり、隣の赤ちゃんが絶叫して泣いても「我関せず」と眠り続けているくらい深い眠りです。


「起きないし、何も飲んでいないのに大丈夫でしょうか?」とスタッフもお母さんも不安になります。
でも大丈夫です、だいたいは。
お母さんの夕食の頃から、新生児の活動の時間が始まります。
本当に不思議ですが、夕食の直前から深い眠りだった新生児も起きはじめるのです。あれも「置き去り防止センサー」の一種なのでしょうか。
「お母さんのアンテナがご飯のほうに向いちゃって、危険!」という感じです。


一旦覚醒すると、だいたい夜中の2時3時頃まで浅い眠りが続きます。
少しおっぱいを吸って眠ったかなと思うと、また30分から1時間ぐらいで泣き始めます。
ミルクを補足しても、同じです。
しょっちゅう抱っこ、おっぱい、あやすを繰り返して、お母さんがへとへとになった真夜中に、急にストンと眠り始めて朝方まで深い眠りが続きます。


朝方の5時6時頃からまた活動の時間が始まり、おっぱいを吸ったりミルクを飲んで少し眠ったかなと思う頃に、またお母さんの朝食とともに起きて泣き始めます。
そのあとは浅い眠りと授乳や抱っこであやすを繰り返して、お昼前頃からまた深い眠りになります。
「今夜の夜勤に備えて眠ります」という感じです。


中には、出生直後から比較的深く眠る時間帯の多い新生児もいます。
でも大半の新生児は、この生後2〜3日の眠りと行動のパターンには上記のような共通性があるような印象です。


この新生児の眠りは「お腹がすいた」とか「お腹がいっぱい」ではないところでコントロールされ、変動しているのではないかと考えています。
新生児の「眠り」あるいは「目を閉じた状態」についてもう少し書いてみたいと思います。



新生児の「吸う」ことや「哺乳瓶」に関する記事のまとめはこちら