新生児の哺乳行動とは 9  <赤ちゃんの眠りと行動2 夜中に活発な胎児や新生児>

前回は生後2〜3日頃までの浅い眠りについて書きました。
今回はその後の変化と、胎児と新生児の眠りついて書いてみようと思います。


<生後2〜3日以降の新生児>


生後2〜3日までの「うんちとの闘い」が終わって、母乳便や乳汁便に変化した日の夜はまるで別人になったかのように、激しく泣くことが少なくなり、急にまとまって深い眠りの時間が増えてきます。
「今まで頑張ったから、一休み」のように、よく眠る日もあります。


生後2〜3日を過ぎると夕方から夜中2時、3時頃までは1時間おきに起きて泣いたり少し吸ったりという活発な日でも、睡眠自体は深くなるようです。


そして朝方まで少し深くて長めの睡眠があり、午前中はやや活発な時間帯が続き、そしてまた夕方までやや長くて深い眠りの時間帯というパターンのようです。


こうした日中の睡眠、夜型の活動がだいたい1ヶ月ごろまで続き、1ヶ月前後を境にして夜間の授乳間隔があくようになり、日中から夕方に活発な時間帯がシフトしていくようです。


1〜2週間という長さで新生児の睡眠のパターンを見てみると、しょっちゅう起きて眠りが浅い日とあまりぐずらずに深い眠りの日と不定期ですが交互にあります。
時には朝方5時頃まで、ほとんどうつらうつらしか眠っていないような夜があり、たとえミルクを足してもやはり1時間ぐらいで泣き、お布団に寝かせようとしただけでハッと起きてぐずり、一晩中授乳と抱っこの日もあったりします。
「いったい何がいけないのだろう。足りないのだろうか。調子悪いのではないか」とお母さんたちが不安になる夜があります。


たいがいこういう日は、体重が急増していることが多いようです。
1ヶ月までの新生児の平均的な体重増加量というのは20〜30g/日ですが、それは右肩上がりに直線を描くものではなく、2〜3日急増したかと思うと2〜3日は横ばいというような不規則な変化をしています。
自宅では毎日体重を測るわけではないのでわかりにくいと思いますが、時には一晩で100gぐらい増える日があります。
そりゃ赤ちゃんにしたら眠れないでしょうと思います。


<胎児期から新生児期の睡眠のパターン>


いわゆる分娩監視装置(子宮収縮胎児心拍モニター、CTG)で胎児心拍のパターンをグラフ化して見ることができるようになったことで、ただ胎動があるかどうかだけでなく胎内でも新生児には睡眠のパターンや活発に活動しているパターンなどがわかるようになりました。


妊娠36週ごろから外来でこのCTGを装着して赤ちゃんが元気か確認をし始めますが、妊婦健診は通常日中なので赤ちゃんの心拍は変動が少なく眠っているパターンが多いです。
切迫早産で入院中の方や分娩入院の方は夜間も装着するので、胎児が夕方から活発な時間帯があるのがよくわかります。
夕方から夜中の2時頃までは胎動も活発です。日中なら1時間に1〜2回の長めの睡眠があるのに、夜間は1時間に時に2〜3分ぐらいの睡眠が時々あるぐらいでノンストップで活動しているようです。
夜中の2時3時を過ぎると急に長めの睡眠パターンが入り、朝方まで胎児も深い眠りに入っているようです。


胎児期から新生児期、そして1〜2ヵ月ごろまでの赤ちゃんは、こうして基本的には「夜型」の生活であるということでしょう。
以前は、「この子は昼夜逆転しているので、生活のリズムをどうしたらよいですか」という質問を受けることが多くありました。
最近は先手を打って、妊娠中や分娩中にモニターをつける機会に胎児から新生児期の睡眠と活動のパターンと生まれたばかりの赤ちゃんというのは「夜型」であり直す必要があるものではないことを話をしておくようにしています。


多くの妊婦さんが夜間眠れず日中に眠くなるという悩みをもっているので、胎児の活動パターンにあっていることがわかるとそれも安心するようです。


<なぜ、胎児や新生児は夜間活発なのか>


新生児期にも一晩で100gぐらい体重が増加する時期があるように、胎児期にも急に体重が増える日もあります。
体重以外にも日々すごい勢いで変化成長しているのだと思いますが、それに必要な代謝をお母さんが肩代わりして育ててくれている状態です。
日中というのは大人自身が自分の生活行動のための代謝量が多い時間帯ですから、その時間に胎児がむくむくと成長していてはお母さんの体への負担は大きくなります。
夜間なら母親の活動量が減るので、胎児がむくむくと成長することでの母体への負担が少ないからではないか・・・と。勝手に推測しています。


生まれてからの授乳も高カロリーの母乳を母体から引き出すわけなので、やはり母親自身の代謝量が少なくなる夜間のほうが負担が少ないのではないでしょうか。


妊娠・出産、そして育児のペースに慣れるまでは基本的に夜間に赤ちゃんが活発なのも、何かそれなりの理由があるのでしょう。


次回は新生児の眠りにつくまでの行動を書いてみようと思います。




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