院内助産とは 17 <「助産師からみた出産の問題点」>

院内助産について、妊産婦さん、産科医側からのあれこれを考えたところで、次に助産師側から見直してみようと思っていたところ、ちょうどネット上で山梨県の自宅分娩の記事が紹介されていました。


「ウォッチング'12:自宅出産 『赤ちゃんが生まれた』家族全員が見守る/山梨」
毎日新聞 2012年07月24日 地方版
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20120724ddlk19040032000c.html


この関連記事に、院内助産を勧める側の思いと重なると思われる内容がありました。全文、記録しておこうと思います。


「追跡、発掘:助産師から見た出産の問題点  甲府・有井澄江さんに聞く/山梨」
毎日新聞 2012年06月22日 地方版
http://mainichi.jp/area/yamanashi/news/20120622ddlk19100053000c.html

□自宅でなら家族の絆深まる
□親が子供に伝えていくべきもの 「マタニティビクス」や食事療法で準備

 近年ほとんどなくなってしまった助産所や自宅での出産。「病院が安心」との声も根強いが、現在、県内で事実上唯一、自宅出産を受け付けている有井澄江助産師は「お産は綿々と受け継がれてきた人間の本能。特別な疾患などない場合にでも病院での出産が当たり前のようになっている現状はおかしい」と訴えている。助産師から見た現在の出産の問題点と提言を聞いた。〔片平 和宏〕


 実際に出産に携わっている県内の助産所は、県助産師会によると、4箇所あり、いずれも、母乳や育児相談なども行っている。
有井さんの有井助産所甲府市西田町)もこのうちのひとつだ。


 有井さんは現在のお産を「病院で点滴につながれ、モニターずくめ。陣痛促進剤の投与や器具や吸引での分娩(分娩)など自然でない」と話す。そうした「医療」が必要になるのは、「電化製品などの普及などで体力の衰えがあるため」だと指摘する。


 例えば、出産や産後の尿漏れ予防に必要な「骨盤底筋」。最近では洋式トイレの普及などでしゃがむ機会が少なくなり、鍛えられなくなってしまっているという。有井さんは、妊婦の体力などに応じて、出産に向けて体力を整える「マタニティビクス」やウォーキング、食事療法などで、出産ができる状態に整えていく。


 自宅分娩にこだわるのは、「出産は親が子供に伝えていくべきもの」との考え方からだ。近年は家族が立会いできる病院も増えたが、より密接に出産に立ち会える自宅出産で家族の絆が深まっていく様を見てきている。


 助産所で長男(6)を出産した富士川の主婦(37)は、「生まれてくる命とちゃんと向き合いたかった。人間という動物本来の姿として産みたいと思った」と選んだ理由を話す。出産は18時間かかったが、助産所での出産のために夫に体を支えてもらったり、抱きかかえてもらったりするなど「家族が主体で(助産師に)寄り添ってもらう形で良かった」と振り返る。


 助産所で長男(3)と長女(生後5ヵ月)の出産をした甲府市の公務員、雨宮ゆみさん(32)は「不必要な医療は受けたくない」との思いのほか、病院では出産の際にどの主治医や看護師の担当になるか分からない状況に疑問を感じて助産所を選んだ。「お産の専門家に心配なことをいつも相談に乗ってもらえ、安心だった」と話す。


 有井さんは「お産は女が全能力を使う活動だからこそ、リラックスできる空間ですべきもの。自宅出産、助産所出産は自身に苦労が多いが、喜びも多い。
その力を引き出すのが助産師の仕事」とその魅力を話す。

山梨県助産所・自宅分娩の統計>


山梨県助産師会のホームページでは、現在分娩を取り扱う助産所は2ヶ所のようです。


4年前の統計ですが、日本助産師会の安全対策委員会が集計した「平成20年1月〜12月全国分娩件数および転院件数集計について」(「助産師」vol.63, No.4(2009.11))では山梨県のデーターは以下の通りです。
(当時もう一箇所自宅分娩をしている助産所があったようですが、ご本人の妊娠出産で現在休止になっているようです)

山梨県内の施設からの回答率75%
助産所数:4
助産所内分娩数:46
自宅分娩数:4
平成19年(2007)分娩数:6
平成18年(2006)分娩数:1
助産所内転院数
  [緊急] 妊娠:2、分娩:0、産褥:0、新生児:0
  [非緊急] 妊娠:1、分娩:0、産褥:0、新生児:0
  [どちらともいえない]妊娠:1、分娩:1、産褥:0、新生児:0
出張分娩(自宅分娩)転院数
  [非緊急]新生児:1


山梨県の平成20年の出生数は6,908人なので、この年の0.7%が助産所・自宅分娩での出生ということになります。


平成18年にはわずか1人、翌年も6人ですから、平成20年には県内で助産所で扱う分娩数が急増しています。



記事に関してはいろいろと細かいところで疑問や反論はあるのですが、とりあえずは今回は助産師の中にある考え方の典型のような文として紹介するに留めておこうと思います。


次回からは、院内助産について助産師の視点から考えていこうと思います。





「院内助産とは」まとめはこちら