医療介入とは 73 <助産師と超音波検査>

ここ数年で、院内助産助産外来や助産所の写真には決まって助産師が超音波画像機器を自ら操作してみている写真が使われるようになりました。


助産師は、この超音波画像で何をしているのでしょうか?


検査、つまり異常の発見として行うために、助産師には必須の知識と技術となっていく時代なのでしょうか?


そしてその法的根拠は何なのでしょうか?



前々回の記事で超音波検査(エコー)の話題を取り上げたので、以前から書いておきたいと思っていた助産師と超音波検査について考えてみようと思います。


そして琴子ちゃんのお母さんのブログでも、以前からその内容について考えていた日本産婦人科医会の資料がちょうど紹介されていました。


日本産婦人科医会医療対策委員会が2003(平成15)年8月に発表した「助産婦さんへのアンケート調査結果」という資料です。


その中の「2.助産所に対する支援の検討と提言」に次のように書かれています。

1.助産所に求められる姿勢


保助看法による助産師の業務は、正常な助産に関することであり、医療行為は原則として医師の監督下に行われなければならない。
検査については、超音波検査、分娩監視装置によるスクリーニング検査を行うことが許されているが、医学的確定判断は医師がする
NSTによるfetal distressの診断は医学的判断であるため、法律上は助産師の業務を越えることになるが、逆に胎児の異常徴候の判断が出来なければ、社会的な責任を問われる可能性が高い。
医学的管理が必要と判断される妊婦のリスクを早期に発見し、医師による診断と治療にゆだねることが助産師の重要な責務である。
助産所では医療処置ができない以上。病院以上に患者さんを選択する必要がある。ハイリスクをスクリーニングすることができるように診断技術の向上に努めて欲しい。


<「超音波検査」とは何か>


上記の一文を読んで戸惑ったのが、「超音波検査」は超音波画像検査まで含んだ意味で使われているのかどうかがわからない点です。


ドップラーとCTGのトリビアで書いたように、ドップラーによる胎児心拍の測定も「超音波」です。


昔は耳でトラウベという木製の筒を当てて聴診していましたが、それが超音波ドプラー胎児心拍検出器を使って測定することが一般的になりました。


胎児心拍というのは1分間に140〜150回前後と速いので数えるだけでも大変ですし、トラウベでの聴診では徐脈になっても客観的な数値に表すのが難点でした。


ドップラーでは1分間にどれくらいか予測した数値に換算されて表示されますから、胎児心拍の異常の観察がかなり正確にできるようになりました。
それを連続して聴取し、陣痛圧とともに記録できるようにしたものが分娩監視装置です。


ドップラーも分娩監視装置も、臨床では助産師あるいは看護師の判断で使用しています。
それは「異常を発見し、医師に報告する」ために必要な情報を観察する手段であり、血圧計や心電図と同じだという認識です。


上記の文章は、文脈からこのドップラーを「超音波検査」としているのでしょうか?
それとも「超音波画像診断機器」の使用まで助産師に許されると、産科医側が認めたものと解釈できるのでしょうか?


産科医がそれを認め、法的根拠が明確にされたのであればそれはいつ頃からなのでしょうか?


また冒頭の日本産婦人科医会の資料では助産師に「診断技術の向上に努めて欲しい」と書かれていますが、助産師には「診断」が許されているのでしょうか?「診断」とは何なのでしょうか?


どなたかご存知の方がいらっしゃったら、教えていただければ幸いです。



手元に「助産師・看護師のための超音波画像診断 改訂第2版」(高橋克幸・武谷雄二氏監修、南江堂、2007年)があります。
1993年に第1版が出版されています。


次回はその序文を紹介しながら、いつからどのように助産師の中で超音波画像診断機器の操作が広がっていったのか、考えてみようと思います。


というわけで、しばらく整体の話から離れます。